How to Live, How to Behave No.1

着替える


仕事から帰ったら

夜、仕事を終えて家に帰ったら、まず、何をしますか。とりあえず、トイレに直行というのは別格として、着ていたものを脱ぐと思います。えっ、そのまま食事にしちゃいますか。だめだめ。仕事着はすぐに脱いでください。スーツだったら、上着もズボンもハンガーにかけて休ませてあげます。作業着だったら、ひどい汚れを取ってから洗濯機に直行ですかね。

手ぐらいは洗って欲しいし、シャワーくらい浴びてください。できたら、お風呂にはいってしまってください。腹が減って我慢ができない、もう倒れそうだ、だって?勇気を出し、叡智をしぼれば、そういう困難は我慢できると思いますよ。そんな格好で食卓についてはいけません。なに、今日はたまたま早く帰ったので家族みんなで食事をしたいけど、みんなが待ちきれないって?駄目です。待ってもらいなさい。何故って、外から帰ったあなたは臭いからです。煙草の煙の中に5分いただけでワイシャツはたっぷりとその煙を吸い、十分に臭くなっています。汗の臭いだって、本人は気がつかなくても、家族から見たら十分気になります。

これこれ、パジャマなんかに着替えてどうするんですか。パジャマは駄目です。シャツとズボンにしてください。どうせ寝るんだからいいじゃないか、って?そういう問題じゃありません。食事なんですから、ちゃんとした服を着てください。ジャージも駄目ですからね。そうそう、それでよろしい。

さて、なんでパジャマではいけないのか。理由は2つあります。ひとつめは、時間の使い方の問題です。今日1日が終わってしまったと考えるか、今日という日はまだまだこれからいろいろあるんだ、と考えるかで人生が違ってくるのです。ふたつめは、雰囲気の問題です。雰囲気というのはとても重要で、これひとつで気分も行動パターンも大きく変わってしまうのです。

時間の使い方の問題

かりに、午後8時に帰宅したとします。大急ぎでお風呂にはいれば、8時半には、さっぱりした気分で夕食にありつけると思います。もちろん、ちゃんとまともな服装に着替えてです。まともな服装といっても、何もジャケットを着ろと言っているわけではありません。下着やパジャマの延長のような格好、つまり、そのままお布団にGOできてしまうような格好はやめてくれ、という程度のことを言っているのです。(でも、日本の大多数のお宅では、ちゃんと着替えただけで「パパ、どうしちゃったの?」と家族は仰天すると思います。)

さて、これで夕食に臨むことができるわけですが、そのままお布団にGOできない格好ということは、そのままお出かけができる格好であるということを意味します。たとえば、お子さんに付き合って、近所のレンタルビデオ屋まで散歩ができます。お出かけしないまでも、席を改めて、食後のティータイムを過ごすことが可能になります。作りかけの真空管アンプを引っ張り出して(そんなことをやるのはお前だけだ、と言われそう)、作業を続行してもいいし、読みかけの本の続きを読むっていうのでもいいでしょう。お気に入りのインテリア雑誌を囲んで、家族みんなであれこれ品定めするなんていうのもいいんではないでしょうか。お隣のご家族を誘って、深夜まで盛り上がるっていう手もあります。

もし、これがパジャマ姿だったら、お出かけなんてできませんし、人を呼ぶこともできません。えっ、パジャマ姿のまま人を呼んじゃうって?・・・そういう人は、こんなHomePageにアクセスしたって、何の足しにもなりませんよ。人生は仕事だけではありません。仕事の終わりが1日の終わりではありません。仕事が終わった後こそが、人生のための時間なんです。あなたの時間を、あなたの家族の時間をもっと大切にしてください。

雰囲気の問題

封建時代の農民や労働者にとって、人生は、寝ることと働くことの2つしかありませんでした。ですから、人生に必要な服装は、パジャマと労働着だけで良かったのです。しかし、現代の我々はちがいます。この2つに加えて、自分の時間というものがあります。この自分の時間を過ごすのに、パジャマや労働着はふさわしくありません。しかるべき服装というものがあると思います。

私達は、時間帯、場所、目的に応じた服装をすることで、人生にめりはりをつけることができます。これが、TPO(Time, Place and Object)です。自分の時間を過ごすのに、それにふさわしい服装で臨むか、仕事着のまま、あるいはパジャマ姿で代用するかで、気分はずいぶんと違うと思います。おしゃれであることと、TPOをわきまえるということとは同義です。着替えるのが面倒くさいとか、時間の無駄であるとか、そういうこととは異なる次元のことを言っているのです。

生活の中にある雰囲気を大切にしたいのであれば、TPOをわきまえ、めりはりのある服装・・・すなわち、おしゃれを心がけて欲しいと思います。

休日

まめに着替えるということ、めりはりのある服装をこころがけること、これが如実に現れるのが休日ではないでしょうか。朝、起き出してから寝るまでの間、おとうさんが一体どんな格好でいるのか、家族はもっと関心をもたなければいけません。もし、パジャマのままで朝食の食卓につこうとしたら、着替えてきてちょうだいね、とやさしくたしなめてあげてください。そういう奥様の言葉に耳を傾けることができない旦那様は、男としての品格に欠けるものであると反省しなさい。

今日一日、どのように過ごすかで、どんな服を着るかが決まります。午前中は植木を買いに行って、庭仕事をするんだ、というのであれば汚れてもいい服装。午後はママのお買い物の足をつとめるのであれば、ママの服装に合わせたものに着替えたほうがよさそうです。私は、夫婦おそろいの衣装というのはあまり好きではありません。家族がそれぞれ別の服を着ていながら、なんとなくマッチしている、というのがコーディネートの達人であると思います。

実は、奥様方によるご近所の旦那様方の服装チェックというのは、じつにきびしいんであります。あちらのパパはお庭の手入れが熱心なのはいいけど、パジャマのまま泥だらけっていうのは考え物ね、こちらの旦那さんはいつもちゃんとした服装でうらやましいわ、てな調子です。家でくつろぐ、作業をする、遊ぶ、野山を駆け巡る、ちょっと買い物に出かける、よそのお宅を訪問する、コンサートに出かける、かなりフォーマルな食事の席に招かれる、といったさまざまなTPOに合った、しかもその人らしさが感じられる服装というものを、もっと考えたいと思うのです。

おしゃれとは

おしゃれとは、なにも人に比べて格好良い服を着たり、話題のブランドのものを着たりすることではありません。シャツ1枚、パンツ1本選ぶ時に、その場にふさわしものであるかどうかを考える、ということに尽きると思います。近所のファミレスに出かけるのにジャケットとネクタイっていうのも変ですが、フォーマルなレストランでの食事に呼ばれているのに、Tシャツというものどうかと思います。

世の中には、非常にフォーマルな席でも、実にくだけた服装でキメることができてしまう人達がいます。そういう人達は、最初からそういうことをやっていたのではないでしょう。おそらく、フォーマルな場ではばっちりフォーマルにキメることができる人達なんだと思います。だからこそ、くだけた格好の中にもちゃんとフォーマルな場での基本的な約束だけは守っているのです。ピカソは、きわめて精緻なデッサンができるアーティストであるからこそ、あのような絵が描けるのです。デッサンもできない人がピカソの真似をしても、それでは絵にならないのと同じです。

海外のリゾート地に遊びに行こうとするならば、活動的なシャツやパンツだけでなく、ジャケットの1着とシャツとネクタイの1本をかばんの底に忍ばせるくらいのセンスが欲しいのです。そして、状況に応じてまめに着替えるということが大切です。昼間は短パンにTシャツだったと思えば、夕刻にはジャケットにネクタイで現れる、というのがほんとうのおしゃれというものです。

これと同じことは、日常の家庭生活の場にもいえると思います。だから、1日のなかでもまめに着替えてください。それだけのことで、生活のスタイルは確実に変化します。おしゃれな生活を身に着けるためには、物を買ったりするのではなく、まず、行動を変えなければならないのです。


How to Live, How to Behaveに戻る
The TOKYO METROPOLITAN Lifeに戻る