ウッドパネルとラティス
東京の都市部に住んでいると、余程にお金に御縁があるか地主でもない限り、ガーデニングを楽しめるような庭を持つことは許されません。一方で、マンション住まいでは、要不要に関係なく、好むと好まざるとに関係なく、普通、ベランダなるものがついてきます。しかし、ベランダというやつが厄介者でして、油断するとあっという間に物置と化し、ひからびた植木鉢だとか、誰もいなくなって久しい熱帯魚用の水槽等に占領されるという事態になっています。快適でおしゃれな都市生活を目指すならば、まず、その薄汚れたベランダをなんとかしなければいけません。最初にすることは、着替えです。汚れてもかまわないシャツとパンツに着替え、手には軍手をはめます。ゴミ出し用の大きな袋も用意します。そして、一気呵成ガラクタ類を処分します。推察するに、ベランダに放置されていたガラクタ類は、すべて処分してしまっても問題ないと思います。未練は無用。
物ひとつないベランダは、あちこちにしみやら汚れがついていますので、デッキブラシなどでごしごしと洗い流します。たぶん、排水口には髪の毛や虫の死骸や木の葉などいろんなもので詰まっているでしょう。勇気を出して、穴に指を突っ込み、きれいに掃除してやります。さて、ここまでできたら、冬ならあたたかいお茶、夏なら冷茶で休憩です。こらこら、ビールはまだ駄目ですよ。ビール飲んだら寝ちゃうでしょう?
休憩中にちょっと、ベランダが抱える問題点について考えてみましょう。
こんなベランダじゃ、ねこだって居心地が悪い。
最大の問題点は、コンクリートでできた壁面や床面が無機的で殺伐としているということです。手すりにしても、鉄製かアルミ製ですから、これで居心地の良さなど出るわけがないと思います。そして、このようなベランダでは、日が差せば高温になり、風が吹けばベランダ内で渦を巻きます。植物にとっても人間にとっても、かなり過酷な環境なのです。
この問題を解決する最も簡単な方法は、床にウッドパネルを張り、壁面や手すりにはラティスを張ってしまうことです。上・下の写真はともに我が家のベランダですが、パネルとラティスを張ることで視覚的にも落ち着いてきて、見違えるほどに居心地が良くなりました。日の照りかえしがなくなり、風が巻かなくなったので、植物の生育環境もずいぶんとおだやかなものに変化しました。なんといっても、床が板張りであるために、手やおしりをついても汚れがつきにくく、植物の手入れがとても楽になりました。
ラティスは、60cm×180cm、90cm×180cmといった既成サイズのほかに、ラティス部分と枠とが別個になっていて、自由なサイズに切って組み立てられるものが売られていますから、自分で工作してみたらいいと思います。そもそも、既成のサイズのラティスだけでぴったりはまるベランダなんて滅多にありませんから、どうしても、工作をしなければなりません。時々、既成の90cm×180cmのラティスを2〜3枚ただ立て掛けただけ、なんていう不精なベランダを見かけますが、これではラティスが泣きます。
ちょっとしたことで、こんなにも変われるのだ。
大切なことは、すべてを1日で仕上げようとしないで、何日かかけてじっくり丁寧に作業を進める、ということです。長さが合わなければ切断して枠をつけなおせばいいですし、部品が足りなくなったらまた買いにゆけばいいですし、夜になってしまったら金槌やねじまわしをビールに持ち替えて、続きはまた明日、また来週です。なお、ラティスには表・裏があります。見落としてしまいがちですが、仕上がりに差が出ます。斜めになった板を固定しているステイプルは片側だけから打たれています。このステイプルが見える面が裏、見えない面が表です。
植木鉢用の棚を作る
大きなポットにいろいろな花を寄せ植えしたガーデンもあれば、さまざまなハーブをたくさん栽培するようなガーデンもあります。我が家のベランダにある植物の半数以上が後者であるため、ポットの数が非常に多くなってしまっています。これを床に置くと、どうにも始末が悪く、かといって市販の棚でいいものは見当たりませんでした。
階段状であること、キャスターがついていて自由に移動できること、かなりの重さに耐えること、景観を損なわないような材質や色であることなどが条件です。いろいろ考えた結果、自分で作ることにしました。ホームセンターに行けば、いろいろな板材が手にはいりますし、そこで精密な加工もやってくれます。同じ長さの棚板がたくさん必要なので、180cmから切り出した時に無駄が出ないように、棚の幅は60cmとしました。まず、非油性のホームペインティング塗料を塗り、乾いてから組み立てます。組み立てに要する時間はせいぜい1時間です。
植木鉢の下は、なかなか掃除が厄介なのである。こんなに載せても、指一本で動かせる。
いたって簡単な構造ですが、前後面にも当て板があるおかげで、強度は十分に得られました。人間が2人乗ってもびくともしません。大型のキャスターを取りつけたため、棚の上にどんなにたくさんのポットを置いても片手で楽に動かすことができます。結局、3段のものを2つ、ちょっと小さい2段のものを1つ作りました。下図は、3段の棚のおおよその図面です。
全体構造は、階段状の側板(いちばん濃いグリーン)を2つ作り、左右に立て、これを長さ60cmのいろいろなサイズの板でつないだだけです。側板は、3枚の板を積み重ねて作ります。幅が狭くて長いの1枚、幅が広くて短いの、中くらいの各1枚を使いますが、幅が広いほうの板の「幅=棚の段の高さ」になるわけです。見えなくなる側に3本の板を打ち付けて固定し(破線部分)、1つの階段状の板にします。それぞれの段の上面になるのは3枚の板(中間のグリーン)ですから、全部で9枚になります。さらに、前面の目隠しに1段に1枚の板、合計3枚を当てます。この目隠し板は、棚の左右のたわみを補強する重要な役割を持っています。後面の上下にも2枚の板(いちばん薄いグリーン)を当ててさらに補強します。下面にも2枚の板を渡します。この板に全部で4個の大型キャスターを取りつけます。
私は、厚さ2cmのパイン材を使いました。パイン材は丈夫で風合いもいいのですが、まっすぐな板が少ないという欠点があります。DIYの店頭で売られている板の中から比較的まっすぐなものを選別しました。杉材であれば、ほとんどのものがきれいにまっすぐだと思います。
塗装は非常に重要で、これをするのとしないのとでは寿命も汚れ具合も全然違います。アンモニア系のホームペイントで、落ち着いたグリーンが売られています。組み立てる前の段階で塗装しておきます。きれいに塗るこつは、板の表面をなでるようにできるだけ薄く、2度に分けて塗ることです。そうすれば、乾きも早くタレません。
これは2段の棚。慣れてしまえば、こんなものはすぐにできる。
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