エルメスではありません、ヘルメスです。
ヘルメスのベイビーといいます。
今や、骨董の範疇に属するモノとなりました。

私が学生頃はまだパソコンなんていうものはなく、海外とのやり取りはまだ紙テープを使ったテレックス（わかるかな）でファックスもなかったのです。
正式な英文ビジネスレターを書くにはタイプライターを使いました。
というわけで、大人の真似事をしたかった私はお小遣を貯めてこれを買ったのです。

動機はきわめて不純で、これでレコードやカセットテープのカード作りをしようという魂胆でした。
クラシック音楽が中心ですから、ドイツ語が打てなければなりませんし、できればフランス語とイタリア語もなんとか打ちたい。
ヘルメスのBabyには英語バージョンのほかに欧州言語バージョンがあり、それを取り寄せました。
ドイツ語の「エスツェット」は「S」を重ねる「SS」で代用せよとのことでしたが、それでは面白くないので「エスツェット」を１文字だけ特注したのでした。
かくして、注文３ヶ月後、世界に１台しかないタイプライターを手に入れたのでした。