私は、学生時代からのオーディオ狂いです。学生の頃は、テープデッキの2台や3台くらいあってあたりまえのオーディオ乞食でありました。ところが、結婚した相手というのがなかなかのツワモノでして、テープデッキは1台でヨロシイ、カメラも多すぎるから2〜3台手放しなさい、スピーカーも大きいのは美観を損ねるから小さいのにしてネ、とまあこういう調子でありました。
さて、かさばるスピーカーはすべて後輩に譲り、自分のスピーカーを選ぶことになったわけですが、とにかく音にうるさい奥さんなので、ちいさくて、音の密度が濃くて、存在感があって、レンジがちゃんと広いスピーカーをさがさなければなりません。Rogers LS3/5AはBBCモニターとして良く知られており、私もその名を知らなかったわけではありませんでしたが、オーディオショップで音を聴いてみると、これが期待どおりです。LS3/5Aは、ピアノも声楽もオケもこの大きさからは想像できない大きなスケールでいきいきとしています。しかし、当時1本95,000円もして(我が家の大形冷蔵庫が78,000円だった)生活費の捻出に腐心しているわが妻にはとても言えた金額ではありません。でも、ほしい。大きいのがだめだったら、これくらいの贅沢したっていいじゃん。と、心の中のアクマがささやきます。
ある日、オーディオショップの店頭に妻と連れ立ってでかけました。お気に入りのレコード(そう。当時はレコードだった)をかけてもらい、スピーカーを切替えながらLS3/5Aにしてもらいます。
「ねえ、どっちがいい?」
「(LS3/5Aを指差して)私、こっちの方がいいわ。」
「おじさん、これがいいそうです。」
「はいはい、ではこちらへ・・・」
あのとき、買うか買わないかじゃなくってどっちか決めろというもんだから、ああ答えるしかなかったじゃないの。もう最初から買うって決めていたんでしょう!と今でも言われます。あれからもう20年以上経ちますが今も現役です。
小型スピーカーを上手に使いこなすこつは、床に置いたり、本棚などに突っ込まないことです。本棚に詰め込むことで低域がうまく反射される、というのはウソだと思います。スピーカーは、座ったときの目の高さまで持ち上げ、壁からは15cm以上はなし、左右に十分な空間をつくってやることで、驚くほど豊かな響きになり定位も良くなってくれます。
欧州で生まれ育った素性の良いスピーカーをうまく鳴らすのに、高価なアンプを用意するのもいいでしょう、高い線材を買い込むのもいいでしょう、でも、もっと値段の高いものすなわち「ライブでゆとりのある空間」を与えることの方がはるかに効果があります。
使い始めて30年経っても音が劣化することなく、むしろ絶好調です。
いいスピーカーなので、某大学の音楽マネジメント研究室で活躍する若き準教授氏にプレゼントしました。
さらに、これからいよいよ活躍してほしい指揮者氏にもプレゼントしました。