1970年頃、ここはまだ東京ヒルトンホテルと呼ばれていました。学生だった私を含む一味は、夜になるとよくここを訪れました。お目当ては、夜9時以降にならないとやってくれない「ジャーマンパンケーキ」です。当時は、メニューにも記載されていなかったように思います。巨大で薄いパンケーキで、中には林檎のスライスがたっぷり。ポットサーヴィスの紅茶を注文し、パンケーキにはバターとメープルシロップをたっぷりかけていただきます。大きなお皿からはみ出ているのが名物だったのですが、後にかなり小振りになってしまったことがあります。なんでも、保健所がうるさいとか。最近はまたお皿ぎりぎりまで大きくなりました。今でも、夜おそくなってからお腹がすいた時は、タクシーを飛ばしてここに来て、ジャーマンパンケーキにありつきます。
※日本のホテルの歴史のひとつを作ってきたこの名ホテルは、諸般の事情により店じまいすることになりました。そして、日本を代表するホテルのコーヒーショップとしてホテル経営の教科書にも載っているここオリガミも閉店です。
今月一杯で閉店となるオリガミは夜遅くまで客足が絶えません。その多くは、私達と同年代か、それよりもすこしだけ年配のいわゆる団塊の方々が目立ちます。そういう人達にとって、ここは青春時代にあこがれを持ってやってきた場所であったのです。こうして築き上げられた多くのファン達の強い要望があって、来春以降、オリガミは同じ赤坂で場所を移して存続することが決まりました。
ホテルという基盤のない店舗の将来は決して甘くないでしょうし、今までには起こらなかったいろいろな問題にぶつかると思いますが、オリガミを支えてきた精神を失うことなく、そして新しい世代の顧客を獲得しつつ長く存続してもらいたいと思います。(2006.11.18)
ホテルが新築になり、オリガミはメインダイニングとして格上げされて新装開店になったわけですが、あまり良い噂を聞かず・・・足が遠のいてしまいました。良き思い出のまま、心の中にしまっておこうと思います。(2011.2.12)