都市生活探検隊 No.1 日帰り軽井沢
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東京に住んでいて何がいちばん困るかというと、どこに行くにも混雑していて、あるいは道路が渋滞していて気が滅入ってしまうことが多いことです。休日ともなると、午前中は郊外方面の電車も道路もいっぱい、午後は早くから郊外から戻ってくる人達で電車も道路もいっぱい、百貨店のパーキングもいっぱいです。これを想像しただけで、休日のお出かけはやめとこう、となってしまうのではありませんか。東京から近いリゾートのひとつに軽井沢がありますね。私が大好きなエリアです。ちょっと気が向いた時に、たとえば、中山農園の浅間ベリージャムがなくなっちゃったから買いたいとか、そのついでにちょっと奮発していつものホテルで夕食なんか食べようか、なんていう時に日帰りができたらなんて贅沢なんでしょう。日帰りの最大の課題は、いかにスムースに帰ってくるか、ということです。休日のリゾートは、電車も道路も混んでいます。それに、お昼の軽井沢はどこも混雑していて行列ばかり。客の扱いもぞんざいでランチタイムもなんだか落ち着きません。落ち着かないまま、帰りの時間を気にして、せかされるように過ごす休日なんていやです。
そこで思い付いたのが、東京を遅く出て、遅くに帰ってくるというスタイルです(これ、うちの奥さんの発案)。日曜日、朝起きたらいつもどおり、洗濯、掃除、お買い物等を済ませます。池袋の百貨店で日用のあれこれを買いに出かけてもいいでしょう。午前中の百貨店は、パーキングは空いているし、店員の応対もスムーズで言うこと無し。とにかく、お昼まではいつもどおり過ごして、おうちでランチを済ませます。さて、それからおもむろに車に乗り、関越自動車道練馬インターをめざします。日曜日もお昼ともなれば、朝の混雑はどこへやら。道路はがらがらで、ほとんど渋滞もなく高速に乗ることができます。
高速に乗ってからも実にスムースで、休憩するまでもなくほぼ1時間で妙義山が見えてきます。ほどほどのスピードで巡航すれば、たぶん、2時間以内に軽井沢に着いてしまうでしょう。さっきまで東京の自宅でランチをとっていたと思ったら、今はもう軽井沢。すでに碓氷バイパスは帰りの車で渋滞がはじまっています。ご苦労さまです。こちらは、これからの一日をゆっくり過ごしましょう。そう、一日なんです。「一日」を「朝から夕方まで」ととらえるのと「昼から夜まで」までととらえるのとでは、後者のほうがずっと充実しているんですね、特に都会に住んでいると。
まず、いつものカフェに立ち寄って、店のオーナーから軽井沢の近況を仕入れます。どの店がつぶれただとか、どの店がはやっているとか、いろいろ教えてもらいます。気になっている裏道や路地に入り込んでみると、必ずといっていいほど隠れ家のような店が見つかります。日が落ちてあたりが暗くなってきたら、中軽井沢の温泉をめざしましょう。一湯1000円しますが、ここは奮発してください。露天風呂に浸かれば、地元の別荘族のおじいさんあたりが話しかけてきてくれて、さらなる情報が手に入ります。そう、塩壷や星野の温泉は、軽井沢を知りつくした別荘族の常連がやってくるのです。
温泉でいい気分になったら、あらかじめ遅い時刻に予約をいれておいたレストランに向かいます。夕食は、9時過ぎまでかけてゆっくり楽しみます。あわててはいけません。東京方面の渋滞が解消するまで、ゆっくりと楽しむのです。思いますに、夕食を楽しまない旅行というのはあじけないものです。たとえ日帰りであっても、その地で夕食をいただくことで、旅行らしさが何倍にも増してくると思います。
さて、十分夕食を楽しんだら、すっかり静かになった道路を東京に向かいます。そんな時刻になっていても、もしかすると本庄を過ぎたあたりから巡航スピードが鈍ってくるかもしれません。それでも、昼間の渋滞に比べたら天国のようにスムースです。練馬出口の渋滞がいやだったら、東松山で降りてR254から富士見川道路を行くか、所沢で降りて川越街道を行ってもいいでしょう。この時刻であれば国道の流れは順調です。
いくら軽井沢を早くに出てもどうせ混んでいて、帰りの高速は渋滞するのです。結局、東京に帰りつく時刻はたいして変わらず、疲労だけが残ってしまいます。いかにして「充実感」>「疲労感」を実現するか。いかにして、「リゾートを身近なものにする」か、みなさんも工夫してみてください。
ニュースで、軽井沢駅前と旧軽銀座のクリスマスツリーのイルミネーションが紹介されていました。今年は、ちょっと足をのばしてのぞいて来ようと思っています。
都市生活探検隊 No.2 日曜日は都心で
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まず百貨店です。日曜日は、午前中に百貨店に着くようにしてみましょう。百貨店はまだ十分空いていて、ややこしい買い物をする時でも、店員さんを一人占めできてしまいます。ほんとうに欲しいものがあって今日中になんとかしたい時、店員さんが相手をしてくれなかったりすると困るでしょう?地下の食料品売り場でお昼のお惣菜などを買い込み、まだこの時間帯はがらがらに空いた帰りの電車に乗り込みます。車で行っても同じで、待ち時間なしで百貨店のPにはいれます。これが、午後2時をまわってからだと、帰りの電車は座れないし、P待ちの行列も長くなってしまいます。
さてビールです。東京に地ビールがあるって、ご存知でしたか。天王洲は寺田倉庫の一角にあるT.Y.HARBOR BREWERY(写真)、知っている人は知っている、倉庫屋が副業(本業か?)でやっているおしゃれなグリル付き醸造所です。
空港に着陸進入態勢をとったジェット機の爆音をはるかに聞きながら、水面に映る夜景を見て過ごす都心の夕暮れはいかがなもんでしょうか。山手通りのドンヅマリを左折し、麻薬の仲買人でも出てきそうな怪しげな倉庫街をはいってゆくと、ぽつんと見える明かりが入り口です。ヴァレットサーヴィスなんていう洒落たサーヴィス(\700)もあって、車で乗り付けたらキーを預けておくだけで車の面倒はみてくれます。
最近の天王洲一帯は、隠れたデートスポットが結構できてきているので、要チェックです。それに、ちょっと足をのばせば(タクシーを使ってもたいしたことない)台場だし、銀座だって決して遠くないのです。ということは、さっきまで銀座にいたと思ったら、15分後には天王洲にも台場にも出没できるということなんであります。
というわけでお次は銀座。都心の休日の王者はなんといっても銀座です。それにしても銀座は年末、特にクリスマス・シーズンが良く似合う。伊東屋で翌年のダイアリーを買わないと今年が終わらないし、おふくろを誘ってのお食事会も銀座・・たとえば資生堂パーラー(写真)なんかいいですね・・でないと気分が出ない。
もっとも、私のおふくろは女学校時代から歌舞伎座に通い、若松でおしるこを食べ、銀座通りのお店の名前を一丁目から八丁目まですべてそらんじたというほどの銀座おたくだから、これは別格というべきか。そんな母親に育てられた私でありますから、銀座贔屓になるのも当然かもしれません。
映画を見た帰りは、明治屋でお菓子の材料やらチーズやらを物色し、煉瓦亭あたりでこざっぱりとしたランチタイム。ミキモトのクリスマスオーナメントを横目に通り過ぎ、鳩居堂やKUROSWAをちょいとのぞく(和光は日曜日はお休みだからショーウィンドーを見るだけね)。松屋で、銀座の石畳(チョコレートです)を買って、その先の角を左に曲がったところのローラアシュレイで、オペラ劇場のお出かけに合わせた冬のお帽子なんかをチェックします。
ハレの休日のイベントとしてふさわしいもののひとつがコンサートやオペラがあります。新宿に日本初の国立のオペラ劇場もできたことですし(写真)、ここはひとつ東京ならではのお楽しみを満喫しなければ損というもの。
開演前に軽いお食事といきたければ、オペラシティーの「Dolce Vita」はいかが。おいしくて洒落たメニューは、食事、お酒、デザートなんでもOKです・・有名なのはカフェ・カプチーノですけど・・でも、娘のおすすめデザートはマチェドニアね。
忘れてはならないのが上野の森の東京文化会館。見易さ、音響、そして風格どれをとってもいまだに一流ホールの地位はゆらがない。あまり知られてないのが夏場の休憩時間にオープンになるテラス・バー。森の中のバーといった風情で、幕間のひととき、アルコールとともに夏の宵を楽しむには絶好のロケーションです。都会の夜は、お酒と劇場が似合います。
都市生活探検隊 No.3 お買い物
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お買い物王国東京。東急ハンズが名古屋の栄にできても、ティファニーが日本中にできても、やっぱり東京がいちばん。お買い物をするのに、世界のすてきなものを探すのに、こんなに便利な街はほかにありません。でもね、いくら東京で京都のお漬物が買えるからといって、奢ってはいけません。たとえば、京のおつけもの。どんなに流通が発達して、同じ屋号の東京店があっても、京都錦小路の同じ店にはかないません。味や文化を高いレベルで守ってゆくためには、「そこ」に行って買わなければならないのです。福砂屋は長崎でなければならないのと同じように、かをりは横浜でなければならず、小川軒は東京でなければなりません。
そういうことを考えてゆくと、ほとんどのものが東京以外のどこかに出向いてゆかなければならないことに気づくのです。なぜならば、今でこそ世界にきこえる大都市東京であっても、ついこないだまでは板東の片田舎だったんですから。上等のこんぶを積んだ松前船は江戸ではなく京都を目指していたわけですし、お茶はいまだに宇治にかなわない(と私は思う)。どんなに航空便が発達しても、うまいモツァレラは、早朝、イタリアの田舎町の店頭でしか手に入らない。
じゃあ、東京にしかないものはどうなんでしょうか。それが残念ながら少ない。というより、いろいろあるんだけれど、どれも田舎っぽくて洗練されてない。江戸っ子に生まれておきながら、こんなことを書くのははばかられるんですが、東京の出汁(だし)はいまいち品がない(ごめん)。蕎麦つゆも、ま、それがいいんですけど。和菓子も同じ。
家具はどうか。どうもよそに勝てない。織物は。やっぱり同じ。じゃあ、陶磁器は。話にならない。そもそも、東京というところはオリジナルの産業があまりないところなんです。東京はモノを作るのには向いていない土地なのではないかと思うのです。理由はわかりませんが、一流品のほとんどが東京以外のどこかで作られています。
それでは、東京が自慢できるのは何か、そう、まぎれもなく「消費力」なのであります。これだけはどこにも負けない。消費の街、東京。そうでした、東京はお買い物王国だったのでした。東京は、世界の銘品のカタログみたいなところ。カタログでいいものを見つけたら、試供品で満足していないで、是非とも産地に足を運んでみましょう。
都市生活探検隊 No.4 平日の夜は都心へ
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都心でちょっといい食事ができる店は、たいてい日曜日がお休みです。土曜日もお休み、という店も少なくありません。たぶん、ちょっといいお値段のお店のお客の多くは、社用族だからなんでしょう。日曜日に営業しても、わずかなお客しか来ないのでは商売になりません。大人のためのお店に限って、土日がお休みなのは困りものです。ところで、平日の都心の道路はとても混雑していますが、夜になったらどんどん空いてくるの、ご存知でしたか。8時を過ぎたら、上野から銀座へ、銀座からお台場へ、お台場から広尾へ、とスピーディに移動できるのです。
こういう状況にフィットした遊びかたを考えてみます。
まず、あなたの奥さんに電話をして、今晩は一緒に食事に出かけたいから、と支度しておいてもらいます(女性の身支度にはかなりの時間がかかるものですから、そのへんの心配りを忘れずに)。仕事を終えたら、さっさと帰宅します。職場から家まで少々遠い人でも、残業さえなければ7時頃には家に着けるでしょう。あなたも、家に着いたら仕事着からカジュアルなものに着替えます。お茶の一杯でもいただいて、ちょっと一服したら、さあ、お出かけです。
夜7時台、都心に向かう道路はそんなに混んでいないでしょう。ほどなく、お目当てのレストランに到着できると思います。まだ、サラリーマンの大半は職場で腕まくりをして働いている時間です。
夫婦そろっておいしい食事をして、食後は夜景を楽しみながらお茶とお菓子で過ごしましょうか。人影も少なくなった霞ヶ関を巡ってみたり、皇居を一周するのも悪くないと思います。羽田空港、レインボーブリッジ、天王洲、銀座、赤坂、恵比寿ガーデンプレイス、横浜ベイブリッジ、横浜山手・・・と、都市も夜景もすべてがひとときのエンターテイメントになるのです。
こういう時間の過ごし方ができるようになったら、ああ、歳を重ねるのも悪くないもんだ、ときっと実感されると思います。
* * * 条件その1: 子供が大きくなって、独立するか、留守番できるようになっていること。
条件その2: 奥さんに、お出かけ用のドレスとコートをプレゼントすること。
条件その3: あなたも、プライベート用のおしゃれな上着と靴を持っていること。
条件その4: 日頃から、レストランや料亭の下見を欠かさないこと。
条件その5: いつまでも、遊び心と探求心を失わないこと。
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