エネルギー

待機電力


今から40年くらい前、家族全員が寝静まった頃になると、一家の消費電力は全くのゼロになったものです。しかし、最近の電気製品のほとんどは、電源スイッチが「オン」になっていないのに、なにがしかの電力を消費するようになったので、留守中でも、深夜でも、家庭の消費電力がゼロになるようなことは滅多になくなりました。このような電力のことを「待機電力」といいます。

電気冷蔵庫が普及しはじめると(それまでの冷蔵庫は、買ってきた氷いれて冷やしていました)、サーモスタットが勝手に働いて、冷蔵庫が自分で電源をオン/オフするようになり、その電気代の大きさに誰もがびっくりしたものです。

テレビが家庭に普及してしばらくたった頃、あるメーカーが、すぐに映るテレビというのを宣伝し、販売しはじめました。テレビのブラウン管はヒーターで電極を暖める一種の真空管ですから、電源オンしてから一から暖めていた当時のテレビは、画面が出るようになるまでに何十秒も待たなければならなかったのです。そこで、電源スイッチがオフになっていても、ブラウン管のヒーターだけはわずかな電流を流しっぱなしにして、いつ電源スイッチがオンになっても数秒で画面が出るようにしたわけです。待機電力型電気製品のはしりだと思います。電源オフでも電力を消費しているという事実は、ほとんど公にはされませんでした。(真空管のヒーターを予熱すると、長持ちするということも事実ですが、これは本題からはずれます)

玄関のインターホンが出現する前は、人間が声で「ごめんください!」とか「きーむーらーくん!あ、そ、ぼ」とか叫んでおりました。やがて、呼び鈴というのが普及しはじめますが、これはもっぱら電池式でした。どの家庭にもあたりまえのようにインターホンがつくようになったのは、ここ20年くらいのことです。インターホンは、あっという間に交流式が主流になり、これが第2の待機電力消費者になります。

そのほかにも、商用電源の50Hz/60Hzを計時に利用した電気時計、家庭用タイマー、タイマー付ラジオ等が普及しはじめます。

ディジタル回路があらゆる電気機器に搭載されるようになると、待機電力の本格消費時代に突入です。我が家にある電気機器で、時刻のディジタル表示のあるものをあげてみると、(1)電子オーブンレンジ、(2)ガスコンロ、(3)シャワートイレ×2、(4)ガス・ファンヒーター、(5)DVDビデオデッキ、(6)電話機・・親機1台/子機2台、(7)オーディオタイマー、(8)炊飯器、こんなにあります。これらすべて、待機電力の消費者です。すごいもんです。我が家の待機電力消費者には、これに(9)Yahooのアダプタ、(10)屋根裏のTVアンテナ分岐装置、(11)テレビ×2、(12)オーディオ、(13)冷蔵庫、(14)温水器、(15)エアコン×4、(16)除湿機が加わります。

しかし、よく考えてみると、16ある電気機器のうち、常時待機電力の必要のなさそうなものもあります。待機電力消費者は、リモコンで呼ばれたときに自力で電源オンするための待機目的のものと、タイマー機能を持っているために電源を完全にオフできないでいるもの、そして、常に予熱あるいは動作し続けていなければならないもの、の3つくらいに分類できます。リモコンやタイマー機能はとても便利ですが、そのために消費する電力であれば数十〜数百ミリワットもあれば足りるのですが、カタログで電気機器の待機電力を見ると、どれも数ワットくらいあってちょっと大きすぎるように思います。5Wが10台集まれば、24時間365日50Wの電球がつきっぱなしと同じことになります。1KWの電気ヒーターを冬も夏も毎日1時間12分、1年間使い続けたのと同じ電力量です。

ご存知のとおり、わが国の電力の大半は火力発電と原子力発電に頼っています。原子力発電の将来の見込みはあまり明るく ありませんから、今後も火力発電の重要性が変わることがありません。ご存知のように、我が国のCO2規制とその成果・見通しは惨澹たるありさまです。政府や官僚どもの責任も大きいですが、我々国民の環境に対するドンカンさは世界に冠たるものがあります。


改造

待機電力の根本的な低減は、基本的に電気機器メーカーのアクション待たなければなりません。自力で、安全に電気機器を改造できる人はごくわずかでしょうし、改造してしまったらメーカーの保証が受けられなくなってしまいます。(メーカーのなかには、しかるべき改造図面や回路図を添えていれば、無償保証はなくても、ちゃんと有償修理してくれるところもあります)

スイッチ付コンセント

英国では、壁についているコンセントの脇にスイッチがついています。これはとてもよい考えです。コンセントを抜かなくても、電気機器に供給される電力を強制的にゼロにできます。ここまでやらなくても、スイッチ付電源タップというのは市販されていますから、これも同じ目的で使えます。

オーディオタイマーも同じ目的で使えます。我が家の場合、1台のオーディオタイマーですべてのオーディオ機器の電源をコントロールしています。根元で電源を切ってしまうので、テレビは待機電力を使わないようになっています。

シャワートイレ

シャワートイレは、余程寒くない限り、便座のヒーターはオフにします。タイマー機能を使って、夜間は温水の予熱もオフにできるものがあります。夏場は、割り切って温水を完全に切ってしまってもいいでしょう。この効果は大きいです。

コードレス電話

長期に外出する時は、コードレス電話の子機の電源スイッチをオフにし、電源コードをぬいてしまいます。子機にはニッカドまたはニッケル水素電池がはいっており、トリクル充電といって、充電池がフル充電されていても、常に一定の強制充電電流が流れるようになっているものがほとんどです。子機の待機電力は非常に大きいのです。

最近のコードレス電話の子機は、バッテリーだけで200時間以上の待機ができるようになりました。そこで、子機の電源コードをつなぐのは土・日だけにして、月〜金は電源コードをはずしてしまうことができます。土・日に充電しておいて、ウィークデーは充電された電力だけで持たせるわけです。このようにすることで待機電力を7分の2に減らすことができ、しかもバッテリーの寿命は縮んだりはしませんから(充電池の電気的な性質についての技術的な説明は省略します)是非とも実行してください。

外付け電源や充電器

パソコンやWalkmanのAC100Vの外付け電源は、たいてい黒い樹脂ケースはいったトランスをじかにコンセントに突っ込む形式になっています。パソコンやWalkmanを使わない時でも、その電源をコンセントに差し込んでしまうと、少量ですが電力を消費してしまいます。携帯電話の充電器も同様ですから、充電しない時は面倒臭がらずにコンセントからはずしましょう。

防犯灯

我が家のエントランスには、夜間に人が通る周囲を照らす防犯灯があります。この防犯灯は太陽電池式で、昼間に充電し、夜間はその充電された電力であたりを明るく照らします。太陽電池は今地球上に降り注いでいるエネルギーを使うので、温暖化に関して理想的な方式だといえます。