代官山という街が、閑静な住宅地からファッションとダイニングの街の顔を併せ持つようになりはじめた頃から仏蘭西料理店とパン屋として営業しているのがこのシェ・リュイ。今や、ヒルサイドテラスと並んで、代官山の代名詞といってもいいでしょう。しかしここは、最近オープンしたカフェを選びたいところです。都会的リゾート気分を盛り上げてくれるメカニカルなデザインの椰子の木を見上げる一等地に位置するカフェ・スタイルのシェ・リュイは、衣替えした代官山の新しい「顔」と言えます。

古来、日本の飲食業界では、レストランと居酒屋と喫茶店とファースト・フードの間に明確な一線が引かれていて、たとえば、紳士諸君がかわいい女の子や美貌のご婦人と街角のカフェでともに語らいながら、キッシュや軽いパスタと一緒にビールだのシェリーだのを飲みつつ、最後は濃厚でクリーミーなプリンとエスプレッソなどでしめる、といったスタイルなどは夢また夢でありました。若い女性のグループの脇のテラス席で、ちょいと洒落たおじさんが１人新聞など読みつつ、ローストビーフつまみにビールなどをぐびぐびやっている、なんていう景色もまた夢でありました。

このようなスタイルは、ヨーロッパでは仏蘭西ではカフェ、伊太利亜ではバールなどという形で十分成熟していますが、東京のあちこちに本格的なカフェが登場したおかげで、ようやく、東京でも日常的に目にすることができるようになってきたわけです。