じつはとってもおいしいのに・・・
食わず嫌いのための室内楽

師匠「このページのテーマは室内楽である」
弟子「えーっ、室内楽って弦楽四重奏とかそういう地味なやつですよね」
師匠「おや、室内楽はお好みではないのかい」
弟子「クラシック音楽は大好きですが、聞くのは交響曲がほとんどであと管弦楽曲が多いなあ」
師匠「じゃあ室内楽コンサートも行かないってことだよね」
弟子「はい、一度も行ったことがないです」
師匠「なんだ、生で聞いてこともないのに嫌いってどういうことだい」
弟子「なんか、4人が向き合ってちまちまと弾いていて変化がないというか、いまひとつ迫力もないじゃないですか」
師匠「じゃあこれを聞いてみてごらん」

L.v.Beethoven Septet op.20
Wiener Oktett
L.v.ベートーヴェンの七重奏曲はレファレンスに適した楽器構成です。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ホルン、ファゴットすべて1人ずつ。
レファレンスには、心地よさ抜群のウィーン八重奏団のDECCA盤を良く使います。
何度聞いても飽きません。
もう1曲はF.メンデルスゾーンの八重奏曲。
なんと1959年の録音ですがプロの音響エンジニア達もたまげた音質。

このCDをお持ちでない方は、演奏者は異なりますがYoutubeをどうぞ。
3楽章→ https://www.youtube.com/watch?v=5kjHOYbib2g
4楽章→ https://www.youtube.com/watch?v=dBBL1VtVvGY
弟子「えっ、これが室内楽なんですか。何ていう曲ですか?」
師匠「L.v.ベートーヴェンの七重奏曲っていうんだ。その第3楽章」
弟子「室内楽っていうよりオーケストラっぽいですね。何人でやっているんですか。あ、ばかな質問でしたね、七重奏曲っていうことは7人か」
師匠「弦楽器はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがそれぞれ1本ずつで、あとクラリネットとホルンとファゴット。つまり1パート1人ずつの小さなオーケストラだよ」
弟子「うーん、今まで思っていた室内楽のイメージとはずいぶん違うなあ」
師匠「すこし音量を大きくして聞いてごらん」
弟子「お、生々しい。すごい迫力。1本1本の楽器が目の前で鳴っている感じだし、曲もすごく聞きやすくて楽しいです」
師匠「もし、弦楽器群を2本ずつとか4本ずつにしたら迫力出ないかな」
弟子「小さいオーケストラになりますね。でも、僕は今のままの方がいいな。楽器ひとつひとつが生き生きして聞こえるから」
師匠「いいところに気付いたね。楽器ひとつひとつが何をやっているかよく聞こえるだろ」
弟子「う〜ん、こういう感じは交響曲や管弦楽曲にはないなあ」
師匠「じゃあ今度はこれはどう?」

F.Schubert:
ピアノ五重奏曲
イ長調 D.667 「鱒」

J.スタンチュール
ウィーン四重奏団メンバー
M.ブラデラー

クラシックファンでなくても知っているあまりにも有名な曲ですね。歌曲としても知られる「鱒」のテーマは第4楽章にあります。

演奏しているのはウィーンフィルの前コンサートマスターのウェルナー・ヒンクが主宰するウィーン四重奏団のメンバーを核にしてコントラバスを加え、ウィーンで活動するピアニストのJ.スタンチュールが参加しています。

弟子「なーんだ、これは知ってますよ。F.シューベルトの『鱒』でしょ」
師匠「どんな楽器が鳴っていると思うね」
弟子「ピアノと弦楽器。何人だろう?この曲もコントラバスがいますね」
師匠「ピアノに加えてヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがそれぞれ1本ずつ。つまりさっきの七重奏曲から管楽器をはずしてピアノを入れた構成だね」
弟子「なるほど、室内楽っていうのは弦楽四重奏ばかりではないんですね」
師匠「弦楽四重奏曲というのは室内楽としては後発で、特にコンサートでよく演奏される曲目というのは芸術的に非常に高度に洗練されたものだと思うね。だから、初心者にはとっつきにくいし、聞いてもあんまり楽しい感じがしないものが多い」
弟子「私は逆だと思ってました。弦楽四重奏が室内楽の基本で、それ以外のいろんな編成の曲は本流ではないんだとばっかり」
師匠「それはオーケストラという規模の構成と室内楽とを分けて考えているからだよ」
弟子「え?2つのジャンルに分かれているんじゃないですか」
師匠「分かれているもんか、オーケストラと室内楽は同一線上だよ」
弟子「え、でも人数が全然違うし編成も違うでしょ」
師匠「いまどきのオーケストラはたとえば第一ヴァイオリンが2ずつ並んで全部で10人とか14人とかいるよね。でもバッハの時代をみると1パート1人というのがあたりまえだったし、モーツァルトの時代もそうだった。ヨハン・シュトラウスが率いてワルツをやっていたオケだって打楽器や管楽器を入れても14人くらいしかいなかったんだから、計算するとほとんど1パート1人ってことになる」
弟子「交響曲をそんな小編成コンサートなんて見たことないですね」
師匠「それは君が知らないだけだよ。さて、これでも聞いてもらおうかな」

G.Mahler:
交響曲第4番ト長調

Thomas Christian Ensemble

弦楽5部に3管編成、数多くの打楽器にソプラノを加えら編成の曲をたった13人でやっている演奏です。

Erwin Steinの手による編曲はは秀逸です。
こういう編曲活動の発起人といえるのがA.シェーンベルクですが、Erwin SteinはA.シェーンベルクの良きアシスタントを務めた人。流石によくわかっていらっしゃる。

演奏しているのはThomas Christian Ensembleといいますが、メンバーをみるとすごい顔ぶれです。どういう風にすごいかというと、現在のウィーンフィルを支えているMatthias SchornやBernhard Hedenborgといった名があるのです。

このCDをお持ちでない方は、演奏者は異なりますがYoutubeをどうぞ。
全楽章ダイジェスト版→ https://www.youtube.com/watch?v=8BvMosunKjs
弟子「え、これなんですか?G.マーラーの4番ですよね、え、え、何人でやってるんですか」
師匠「13人」
弟子「いやはや、参りました。このCD欲しいです。絶対買います」
師匠「コメントは?」
弟子「ただただ、良いとしか言いようがないんですが・・・・なんで13人しかいないのにちゃんとマーラーの交響曲第4番なんでしょうか?」
師匠「同じではないけれども、これはまぎれもなくG.マーラーの交響曲第4番だよね。Youtubeを"mahler symphony no.4 ensemble"で検索してごらん、まだまだ出てくるから」
弟子「ほんとだ、ざわざわ出てくる。結構いろんなところで演奏されているんですね」
師匠「音楽の裾野の広さがわかるだろ」
弟子「私が不思議なのは、人数が足りない感じがしないことです。物足りなさが感じられないどころか、音楽としても密度がちゃんとあります。これで足りているんです」
師匠「このCDの場合、演奏も録音も良いというのもあるけどね」
弟子「やっぱりこれも1パート1人ってことですか」
師匠「このCDを録音した頃のThomas Christian Ensembleのコンサートの画像があるから見てみようか。こちらは楽器編成からいってA.シェーンベルクの編曲によるG.マーラーの『さすらう若者の歌』ではないかしら」

 バリトンはT.ハンプソンですね。
 チェロはウィーンフィルに入団する前のヘーデンボルク・直樹です。
弟子「おお、すてきなステージですね」
師匠「パートの構成はどうかな」
弟子「弦も管も1パート1人ですね、すごいな、これじゃ手抜きというか油断できないし、ヘタクソな奏者は全くお呼びじゃないですね」
師匠「僕はね、これが音楽をする基本姿勢だと思っている」
弟子「なんとなくわかってきました。1つのパートを1人の奏者が責任を持って背負って立つということでしょうか」
師匠「僕達が経験する音楽の授業やクラブ活動では、ひとつのパートを2人以上で合奏する、音を合わせるということからはじまるわけだけど、そういうことではないんだ。自分が担当するパートは自分ひとりしかいなくて、別のパートと合奏する、音を合わせるということなんだよ。」
弟子「個としての自分の音楽ができていないと、そういうアンサンブルはできませんね」
師匠「なかなかいいところに気付いたね」
弟子「ここまで親切にガイドしてもらって気付かなかったらアホです」
師匠「ではもうひとつ、小さなオーケストラを聞いてもらおうかな」

An der scho"nen blauen Donau

Wiener Ring Ensemble

ウィーンフィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル率いるワルツとポルカを中心に演奏する最高レベルのアンサンブルです。

毎年、年末はウィーンで、お正月は来日してコンサートを開きます。
我が家では、一家そろって仕事も何もすべて放り出して必ず聞きに行くというとても大切な行事です。

メンバーはすこしずつ入れ替わっていますが、その様子を見ていると明らかに次の世代を育成し鍛えているのがわかります。

弟子「じつに堂々とした、オーソドックスな『美しく青きドナウ』ですね。でも人数がすごく少ない。そしてうまい」
師匠「あたりまえだわ、顔ぶれを見たまえ」
弟子「げっ、ライナー・キュッヒルにペーター・シュミードル、ハインリヒ・コル・・・ウォルフガング・トムベックも・・・こりゃすごいや。これがあのウィーン・リング・アンサンブルですか。あれ、もしかして今年亡くなったウォルフガング・シュルツがいたんじゃなかったですか」
師匠「そう、それでフルートは若手のカール・ハインツ・シュッツに代わった」
弟子「ホルンはギュンター・ヘグナーではなかったの」
師匠「お歳だからね、それでトムベックになった。面白いのは、新しくはいったのがまだ待機団員(2014.1時点)のカール・ハインツ・シュッツだったり、大御所ともいえるウォルフガング・トムベックだったりって」
弟子「なんとなく思うんですけど、こういうアンサンブルほど優れた演奏家が集まっていますね」
師匠「じつは、第二ヴァイオリンもチェロもコントラバスも若返りしている。ウィーンフィルの超ベテラン達から中堅で次の主力になる団員に置き換わっているんだ」
弟子「もしかして、ここで人を鍛えているんでしょうか」
師匠「ウィーンフィルというオーケストラは団員と育てることにとても熱心な組織でね、オーケストラ活動だけじゃなくてこうした室内楽のアンサンブルを通じて人材の育成をやっているんだよ」
弟子「室内楽が音楽研鑽の場ということなんですね」
師匠「もちろん、オーケストラとしての演奏の場でも団員の育成は行われている。でも、1人に1つのパートを任せることの教育効果は大きいね」
弟子「さきほどおっしゃっていた音楽をする基本姿勢を身に着けるわけですね」
師匠「とにかく彼らは全く自発的に、しょっちゅう室内楽をやっている。ちょっとこれを見てもらいたいんだけど」

http://www.wienerphilharmoniker.at/concerts/chamber-music-series
弟子「あ、これは師匠おすすめのウィーン国立歌劇場で毎月行われているウィーンフィル団員による室内楽シリーズですね」
師匠「出演者をみるとベテランの首席奏者や若手がごちゃまぜで、それぞれに好きなプログラムを作っている。こんなのはチケットの売れ行きばかり気にしているプロモーターが企画していたらありえない」
弟子「Wiener KammerensembleってかつてコンサートマスターのG.ヘッツェル(故人)が第一ヴァイオリンをやっていて、メンバーが入れ替わりながら今も続いているアンサンブルですよね。CDいろいろ持ってますよ」
師匠「室内楽のブランドともいえるWiener Kammerensembleがここに出てくるっていうのは異例な気がする。このシリーズはそもそも若手は多かったんだよ」
弟子「若手って、Die Wienerに超大御所のGunter Seifertが出てますよ」
師匠「わ、ほんとだ、これは是非聞きに行かなくちゃ」 (注:じつはウィーンまで聞きに行ってしまいました)
弟子「あのう、Eschenbach Quintettってなんですか?まさか、ピアニストで指揮者のエッシェンバッハですか?」
師匠「ははは、これはすごいや。まさにChristoph Eschenbahがウィーンフィルの管楽奏者を集めた臨時アンサンブルだね」
弟子「チケットはいくらなんですか?」
師匠「均一料金でたったの35ユーロ」
弟子「うー、なんかウィーンの人々がうらやましくなってきちゃった」
師匠「お金のためだったらこういうことは絶対にやらないわけ」
弟子「つまり、やりたいからやってるってことですか」
師匠「ある団員がこんなことを言っていたよ。みんなこの室内楽プログラムをやりたくて枠の取り合いになっているんだそうだ」
弟子「じゃあ、自分でコンサートを企画してやればいいのに」
師匠「ところが、全部自分でやるとなると、まずホールの確保からはじまってチラシも作らなきゃならないし、チケットを売るのも大変だ。でも、このプログラムに乗っかればそういうのは全部国立歌劇場がやってくれるからうんと楽なんだよ」
弟子「なるほどね。でも、中味がいいから人気出ちゃいますよね」
師匠「じつはね、パリとかよその都市から同じプログラムで来て欲しいなんているオファーもあるんだそうだ」
弟子「フランス人からみても魅力的なプログラムってことですか。ところで、ホールはどこなんでしょうか」
師匠「ウィーン国立歌劇場の2階のケルントナー通り側に細長い展示室がある。Gustav Mahler Saalっていんだけど、そこの展示をどけてホールにするんだ」
弟子「あ、正面にG.マーラーの絵がかかってますね。これは昼間ですか?」
師匠「そう、11:00開演だよ。毎月1回ペースで開かれるので、シーズン中に10回ある。ウィーンに行くんだったら、大編成のオーケストラ曲のコンサートや有名オペラだけじゃなくて、是非この室内楽プログラムにも行ってほしいな。ウィーンフィルのほんとうの姿を垣間見ることができるよ」
弟子「ところで、師匠がおすすめの室内楽の傑作といったら何ですか?」
師匠「そ、そんな、いっぱいありすぎて・・・室内楽曲は交響曲や協奏曲よりもはるかに数が多いんだぞ」
弟子「ええ、ですからそこをなんとか、よさげな曲をいくつかお願いしたいわけでして」
師匠「じゃあ、我が家の食卓の定番音楽からひとつ」

W.A.Mozart/J.Brahms:
クラリネット五重奏曲

キュッヒル四重奏団
P.シュミードル

W.A.モーツァルトのクラリネット五重奏曲というと、やれウラッハだのプリンツだのライスターだと室内楽ファンはにぎやかですが、我が家では何を置いてもこれです。

はじめてP.シュミードルを聞いたのは、A.プリンツがこれなくなって代わりでやってきた30年も前のこと。いつのまにかこんなにうまくなって、しっかりとした演奏スタイルも確立して・・・・・・そんなシュミードルですが定年を過ぎて今なお活躍しています。

R.キュッヒルとP.シュミードルの組み合わせによるクラリネット五重奏曲は実際に聞きに行きましたが、またやるというなら何処であろうが聞きに行きますよ。

弟子「あ、これ、お宅におじゃまするとよくかかってますね」
師匠「そう、いいものは100回聞いてもいつもいいし飽きない」
弟子「W.A.モーツァルトのクラリネット五重奏曲ってかなり有名ですよね」
師匠「モーツァルトさん、よくもまあこんな傑作を書いてくれたもんだと思うよ」
弟子「編成はどうなっているのかな」
師匠「弦楽四重奏にクラリネットを足した格好だね」
弟子「こういう場合、ステージではどんな風に座るんですか?」
師匠「クラリネットを中央に置くのと、右端に置く2パターンある。下の画像はEnsemble RAROの神戸公演のリハーサル風景だけど、クラリネットは右端だね」
弟子「決まっているわけではないんですね」
師匠「楽器の配置は曲に対する考え方で変わるよ」
弟子「クラリネットが主役だと考えたら中央だとか」
師匠「W.A.モーツァルトのクラリネット五重奏曲は至る所で第1ヴァイオリンとクラリネットとのかけ合いがあるから、両端で向い合せにするのが自然だと思うね」
弟子「なるほど、曲の構成によって楽器の配置を考えるわけですか」
師匠「その典型的な例がメンデルスゾーンの八重奏曲だね。冒頭に聞いてもらったL.v.ベートーヴェンの七重奏曲のCDに入っているやつ」
弟子「八重奏曲ってF.シューベルトにもありませんでした?」
師匠「あるよ。編成は、弦楽器がヴァイオリンが2本、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがそれぞれ1本ずつで、あとクラリネットとホルンとファゴットだからL.vベートーヴェンの七重奏曲よりもヴァイオリンが1本多い。つまりよりオーケストラっぽくなっている。そしてこの八重奏曲は明らかにL.v.ベートーヴェンの影響を受けている」

F.Schubert八重奏曲全楽章→ https://www.youtube.com/watch?v=fnpVu8Eihj4 (わ、アンサンブル・ラロのAlina Pogostkinaが第2Violinで出てる)
弟子「曲の構成も雰囲気もL.v.ベートーヴェンの七重奏曲に啓発されていて『ベートーヴェンさん、僕も作りましたー』って感じがしますね。F.メンデルスゾーンも同じような感じなんでしょうか」
師匠「L.v.ベートーヴェンの七重奏曲やF.シューベルトの八重奏曲の延長線上にあるのはL.シュポアの九重奏曲かな」
弟子「な、なんと七、八、九とあるんですね。ビックリです」
師匠「ところでF.メンデルスゾーンの八重奏曲を聞いてみるかい?全然違うから」
弟子「あ、ベートーヴェンの七重奏曲とは全然違う。全部弦楽器で管楽器がいません」
師匠「どんな編成かわかるかい?」
弟子「うーん、よくわからないけど、コントラバスがなさそうな気がします」
師匠「そのとおり、コントラバスはいない。それから?」
弟子「なんだか音の数が多くて、ごちゃごちゃした感じがあって、うまく聞き取れなくてよくわかりません」
師匠「そのとおり。でも画像付きでよく聞いてごらん」
F.Mendelssohn Barthordy八重奏曲全楽章(チェロ×2)→ https://www.youtube.com/watch?v=NflVfjLB-zs
弟子「わー、面白い。CDで聞くとよくわからなかったのに、画像がつくとすごくわかりやすいしいい曲ですね」
師匠「弦楽四重奏が2セットあるような構造なので、ダブルカルテット(複弦楽四重奏曲)と呼ぶこともあるんだ。だけどF.メンデルスゾーンの八重奏曲は8人が一体となっているので正確にはダブルカルテットではない。」
弟子「ということはダブルカルテットとしての八重奏曲もあるんですか?」
師匠「あはは、なんとL.シュポアが作ってるよ。でもその話はいずれどこかですることにしてF.メンデルスゾーンの八重奏曲を聴こうじゃないか」
弟子「この曲をモノラルで聞いたらアウトですね」
師匠「全くそう思う。でも作曲したF.メンデルスゾーンはこの曲をモノラルで聞くなんていうことは想像もできなかっただろうね。なにしろライブしかありえない時代だったから。同じ曲だけどこれを聞いてごらん」
F.Mendelssohn Barthordy八重奏曲全楽章(チェロ+コントラバス)→ https://www.youtube.com/watch?v=pY_gbooPwoc
弟子「チェロがコントラバスになってますね。どっちが正しいんですか?」
師匠「音楽の世界では何が正しいとか間違いだとかいうのはないんだけど、原曲はチェロ2本だよ。コントラバスに変えて演奏したのはトスカニーニで1947年のことらしい。でもこのことがダブルカルテットではないことを語ってているね」
弟子「私はどっちもいいと思いますけど、できるだけライブで聞きたいです」
師匠「僕がこの曲を最初に聞いた時は、2本のチェロが真ん中にいて、2つの弦楽四重奏が左右に開きになっていた」
弟子「この2つのYoutubeは2人ずつセットで並んでますね。どう違うんでしょうか」
師匠「この曲の冒頭は、ヴァイオリンは2本ずつ、ヴィオラ、チェロそれぞれが2人で同じ動きをしているだろ。でも、場面によっては第1カルテットの4人と2カルテットの4人が掛け合いをするんだよ」
弟子「画像を見ていたら、2本のチェロが揃って低音を受け持っていて、第1カルテットの3人(ヴァイオリン×2+ヴィオラ)が第2カルテットの3人が掛け合いをしているところもありました」
師匠「それは良く気がついたねえ」
弟子「この曲は生の演奏かいか最低限映像付きがいいですね。映像がないならスコアを見ながら聞いてみたい」
師匠「スコアならいつでも貸してあげるよ。曲の構成が手に取るようにわかるから」
弟子「うーん、スコアはちょっと遠慮しときます」
師匠「なんだい、だらしないあ。ところで室内楽の中には変てこなのも結構あってね」
弟子「ヘンテコって、曲がですかそれとも楽器編成がですか」
師匠「その両方ともが変てこなのがI.ストラヴィンスキーの『兵士の物語』かな」
弟子「それってどんな楽器編成なんですか?」
師匠「オーケストラを極端かつ不自然にちっちゃくしているところが面白いんだ」
弟子「」
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