ROVERのある生活スタイル
Life Style in ROVER Car


Finally you meet ROVER 75.

ROVER 75 SALOON 遥かなる彷徨い:

クラシックな西欧の古城風の洒落た外観の喫茶室があった。 如何にもコーヒーが美味いと思わせる趣がある。コーヒー通の私でも、何となく入って見たいという気を惹き付ける何かがある。入って見て、調度品がどうの照明がどうのと言う前に期待を裏切らない雰囲気がある。1日中ここに居たいと思わせる穏やかな風を感じさせる。そういう「感性で乗る」ような車が欲しい、とずっと思っていた。

そういう車で、会社を辞めたら、北海道から九州まで日本全国を高速道路など使わず、一般道路だけで「道の駅」を頼りに期間など定めず、のんびりと旅をしたい。「夢」などという大袈裟な手の届かない事ではない。自分の意思一つで実現可能な事だ。それには、性能はほどほどで良いが、大きさ・スタイル・内装・ぐらいは自分の感性にマッチした、そして自分の懐具合で、背伸びしただけでは届かないが、でもチョッとジャンプすればなんとか届く、その程度の車が旅の伴侶として欲しい。そう思う度に、頭の中をよぎるのは帆船のヘッドエンブレムだったのである。街中で、本当に時たま、出遭う度にドッキンとし、すれ違った後も 後姿をバックミラーから消えるまで目で追ったものだ。それほど帆船のヘッドマークは、感性に訴えるものがあった。

私にとっては、何時かは「ROVER」でなく、最後は「ROVER」という予感があったのだ。

だから、帆船のヘッドエンブレムをつけた車で、旅をしている自分を よく思い描いたものだ。しかし我が人生最後の7代目の愛車となるはずの「ROVER」は、購入のチャンスを見てモタモタしていた(何せディラーが少ない)私を尻目にHONDA・BMWと迷走の果て、日本から消えてしまった。あの時、ROVERと共に旅への思いも消滅したのである。

60歳還暦で定年退職するはずだった私は、請われて65歳まで引き続き勤める事になった。そしてこの5年間の勤務延長が幸運の極みとなった。「ROVER」の復活と新しいSeventy Fiveに出遭う事になったのだから。残すところ、あと2年半、正に運命を感じるほどのジャストタイミングである。旅も復活だ。この車なら長旅のあっちこっちで起こるであろう渋滞もイライラせずに、快適な旅が出来る様な気がする。渋滞で止まったり、信号で止まったり、その度に綺麗だ、カッコいい、羨ましい、恨めしいと、正視・斜視・乱視・黙視・下目・上目・振り返り目とあらゆる熱い視線の集中砲火を浴びたら Seventy Fiveも きっと日本に戻って来て良かったと思うに違いない。そして、チビ・クロ・レオと三匹の黒柴が、人生の三分の二のライフスタイルを変えたように、Seventy Fiveも、私のライフスタイルを変えてしまうだろう。

復活した「ROVER」は、英国のプライドともに二度と日本から消えてはならない。

外車というと右を向いても左を向いてもベンツやBMWだ・・・私は国産や独の車に「夢」も「感性」も、何も感じないのである・・・私に国産車を感性の面から批評させたら、どれもこれもクソミソで粗大ゴミと相成る。が他車の悪口は、「75」が 品がないからよしなさい、私のオーナーに相応しくないと、怒るので止めましょう。(中略)私が「75」を評するならば、「類いまれな魅力と雰囲気を持って人間に惚れたと言わせる唯一の車がROVER 75である」となる。 そして、Seventy Fivewに惚れた定義を明確に記述するならば、何よりも「感性」があり、「雰囲気」があり、「心」を感じ、そして「夢」を持っているからだ。どれも、日独車には、求むべくも無いカタログの数値以外の問題である。

かく言う私も、仕方なく6台の国産車に乗ってきた。サニーGX・コロナ・プレリュード・ビガー・インスパイア・ミレー二アMCである。ミレーニアは、マスク良し、スタイル良し、ミラーサイクルエンジン良しのなかなかの車である。若い頃に憧れた車は、いすず117クーペ。欲しくて欲しくて夢でうなされた車である。自分の給料では手の届かない代物だった。多分一番長い年月に亘って悩まされた車だろう。

私も今年12月は(1月の誕生日)免許(ゴールド)の更新である。この免許が切れるまでは、ROVER Seventy FiveコニサーSE Saloonと一心同体で生きたいと思う。

SHADOW H16.10.17記・・・投稿記事より


We want the real thing.

1990年後半から、日本人の嗜好が変化しはじめている。これまで、私を含む多くの日本人にとって、MercedesやBMWは、高額を積まなけれ ば買えないあこがれの車だった。デザイン的魅力に乏しい、筋骨だけが逞しいドイツ車だけが日本の輸入車マーケットを席巻してきたが、 そのマーケットはすでに飽和している。国産車にも他の輸入車にも気に入ったモデルが見出せなかった私は、1997年、幸運にもR620に出会うことができた。R620やR75に乗って東京の街を走ると、多くの視線を感じる。私のR75に乗った人は、だれもが感動する。最近、TOYOTAもNISSANも明らかにROVER SALOONを模したモデルを市場に投入しはじめている。しかし、彼等が作ったモデルが表面的な真似事であることは、誰もが気づいている。私達は本物が欲しいのだ。

"The preferences of Japanese people started to change in the late 90's. Until then, owning cars such as Mercedes and BMW were dreams which are too pricey for most Japanese people, including me. German vehicles that are sturdily-built but lacking appeal as to their design have been conquering the import market.. I had not been able to find a car for me among Japanese cars nor imports but in 1997 I was fortunate enough to meet the R620. When I drive around the streets of Tokyo in the R620 or R75, I notice people looking at my car. Everyone who has been in my R75 is impressed. Recently, both Toyota and Nissan are starting to throw models similar looking to the Rover saloon onto the market. However, everyone knows that those models are superficial copies of the real thing. We want the real thing."

(2000.10.20/26)


Keeping acoustic beauty.

ROVERに現れている英国らしさのひとつに、アットホームでちょっと上質な居心地の良さがある。それは75だけではなく、114、200、400、600、800に乗っても明確に感じることができる。いや、むしろ故ダイアナ妃のプライベートカーでもあった114などの方がよりROVERらしさを感じられるかもしれない。

最も安価な114でさえ、日本のエコノミーカーでは考えられないほどの質感が盛り込まれている。一方で、オート機能や便利な電装オプションはない(114にはパワステすらない)。400や600にしても、シートには投資してもエアコンはオートではない。国産車高級車だったら内装は「木目調」だが、ROVERでは高級車でなくとも「本物の木目」があちこちに使われる。オプションを指定せずとも多くの場合、革シートになる(もっとも、ファブリックシートでもROVERの味はちゃんと出ているが)。そして、もうひとつはっきりと言えることは、ROVERには、カーデザインにおいて人間の目で見てバランスの取れた心地よい美しさがあり、車を降りた時に、必ず、思わず振り返ってしまうということだ。

世の中がどんなにデジタル化され、斬新なデザインで満たされようとも、相変わらず職人の手によって作りこまれた家具や食器や服飾のデザインの美しさは変ることはないであろう。そういうアコースティックな造形や色彩が、ことのほか自然を愛する英国人に連綿と受け継がれているのではないかと思う。少々保守的で、人間味のある造形がROVERにある。


What do you want to do?

好き嫌いで車を選んだ時、どんな車を受け容れることができるのだろうか。周囲を見れば、静粛性という意味で申し分のない性能の車はいくらでもある。路面の荒れた様子は車内には伝わって来ないだろうし、剛性に不満はないであろう。信頼性にも不満はないと思う。なのに何故、わざわざROVERを選ぶのか。

それは様式の問題なのだ。日本で洋家具を選ぼうとした時、そこには2種類の選択肢がある。日本家屋の感覚で作った洋風の日本家具と、欧州各国のそれぞれの時代の様式にのっとった西洋家具である。フローリングされた洋間であっても、多くの日本家屋のそれは、日本式の洋間である。そこにしつらえられたベッドやチェストは、日本式の家具であって西欧家具ではない。何故ならば、そのデザインや様式は、西欧のどの国の、どの時代の様式にも該当しないからだ。

国産車のデザインや内装もまた然りである。国産車の謎のひとつに、レースのシートカバーがある。椅子にレースのカバーをかけるという様式は一体どこから出てきたものなのだろうか。レースというものは、手作りの工芸品であり、高貴なご婦人の身の回りを飾るものである。それが、編んでもいないレースもどきをおっさんの座るシートの背当てなんかにして、一体どうするんだ。もちろん、ROVERはそんなオプションなど提供していない。なのに、国産車のシートは時々レースもどきをまとっている。中には、ご丁寧にレース風のカーテンまでつけている。謎は謎を呼ぶ。

ROVERの内装のカラーバランスは微妙である。その多くはベージュの革シートが装備されているが、その濃淡は車種によってダイナミックな違いをみせている。ベージュのシートに木目調の板を取りつければ高級車になるというわけではない。国産車の多くが、安易な真似をして墓穴を掘った例にはこと欠かないではないか(プログレは、ローバー800の内装を真似てデザインされたという有名な?話がある)。

国産高級車が持つ様式は、障子や襖が連想させられる。プログレには、残念ながらデザインというものを感じない。セルシオからでかい顔を取ったら、何が残るであろうか。何故、シーマはあれほどにメルセデス・コンプレックスを露にしなければならないのか。何故、小型車の多くがMINIを真似し、レトロに迎合しなければならないのか。ヴィッツにまで、ローバーもどきのグリルをつけて・・・Claviaのことだ、一体何をしたいのだろうか。


A little thing.

我が家には、ドライビングのためのお出かけセットというのがある。ROVERの車内で快適に過ごすための飲み物等セットである。いつも思うのであるが、缶入りの飲料を買って、缶からじかに飲むというスタイルには以前から抵抗があった。ちゃんとした食器で飲む、というささやかな贅沢をしたいのだ。レストランでボトル入りの飲料を注文したら、ちゃんとグラスがついてくるではないか。それに、ウォールナット・パネルのついたカップホルダーにアルミ缶では、いかにも安っぽくミスマッチである。

多くのドライバーが、あたりまえのように缶飲料を外から丸見えのダッシュボード上に立てているが、私はあれがたまらなく嫌いである。仕事で取引先まわりに忙殺されている車のことを言っているのではない。ちゃんとしたオーナーカーで、そういうお行儀のよろしくないことをやって欲しくないと思う。口に入れる物を外から丸見えの場所に置くというのは、少々品位を欠いた行為のように思えるのは私だけか。

そこでまず、グラスが必要になる。もちろん、75のカップホルダーにぴったりのサイズである。ちょっとクラシックなデザインのこのグラスは、Afternoon Tea(店の名前)の定番である。これを、ひとつひとつ布巾でくるんだのを用意する。ある程度の大きさのあるお盆もあった方が便利であることがわかった。膝に載せてテーブルがわりにして、コーヒーやちょっとした軽食をサーヴィスするのに重宝する。あたたかいコーヒーや冷茶を入れておくのに、車のボディカラーのBritish Racing Greenとお揃いのサーモスも用意した。たったこれだけのことで、ROVERの車内はくつろいだ空間に変化する。


British racing green, at first.

ROVERは、車内外ともに、絶妙なカラー・バランスが計算されている。色に対する感受性が問われる車であるということだ。車のボディ・カラーを選ぶ時、オーナーの色の好みだけでなく、普段、その車がどういう場所に置かれているのかについて考えてみることも、重要な意味があると思う。

我が家のカーポートは、煉瓦タイルにおおわれた2軒の隣家に挟まれている。我が家も煉瓦タイル張りである。そして、エントランスの基調となっているもうひとつのカラーは深いグリーンである。門扉も木部も深いグリーンで塗装され、植木の葉の色もあまり明るくないグリーンのものが選ばれている。すなわち、煉瓦色を基調にして、深いグリーンがアクセントになった一角にROVERを駐車するわけである。

煉瓦色の強いコーナーに赤系のボディ・カラーを溶け込ませるのは難しすぎる。人を驚かすでもなく、必要以上の存在感をアピールするでもない。あたりまえなくらいにごく自然に解け込んで周囲の風景と同化するのに、British Racing Greenほどふさわしいボディ・カラーはほかにないであろう。いや、白状すると、家を作る時、すでにBritish Racing GreenのROVERを手に入れることが計画されていたのである。

そのきっかけとなったのが、ROVER 400のカタログの写真である(↑)。煉瓦色や樹木を背景とした深いグリーンの車がどれほど美しく景観に溶け込むのか、これほど明確にイメージさせてくれるカタログ写真はほかにない。この写真を見た時、これから建つはずの我が家のエントランスに似合う車は、ROVERしかないと確信したのである。

(最初に手に入れたNew British Racing GreenのROVER 620SLi)



Clothing.

我が家は、駅から徒歩13分。夜になると、若い女性にとっては、あまりうれしい道ではなくなる。そのため、夜9時を過ぎるような日は、基本的に、駅まで車で迎えに行くしきたりになっている。ROVER 620から75に乗り換えたある晩、いつもどおり、娘を迎えに近くの駅に行った。車に乗りこむなり、娘にひとこと言われてしまった。「75にTシャツは似合わないから、今度から襟付きにしてちょうだい。」と。「ROVER 75+中年のおじさん+Tシャツ」という組み合わせは、駄目だというのだ。

イマジネーションを働かせて、Tシャツを着た自分が75の運転席に座って駅の車寄せに停まっている様子を想像してみると、やはり、これは格好が良くないのだ。ぼさぼさ頭も駄目である。良く考えて見れば、これは至極当然のことと言わねばなるまい。車の外観や内装のデザインにこだわるということは、その車に乗る人の身なりにもこだわらなければならない、ということを意味する。

「いや、そんなこと、気にしなくてもいいじゃないか。」というご意見もあろうかと思うが、我が家では通用しない。女がつける注文はうるさいのだ。それに、こっちがちゃんとしているというのに、すっぴん顔に乱れた髪で隣に乗られるのもお断りである。お互い様っていうことか。


Changing your driving style with ROVER.

ROVERのカタログを見ていると、内装と安全性についての説明に出会う。人間にとって心地よい内装は安全に貢献するというのだ。ROVERに乗る前は、その意味を理解することができなかった。なんだか適当なこじつけをしているなあ、くらいにした思わなかったのだ。ところが、620に乗っていうちに、その言葉の意味がだんだんわかってきた。そして、75に乗り換えて、一層明確に実感するようになった。

信号機のない横断歩道の前で人が立っていると、自然にブレーキングして停止できている。不思議である。加速は概してゆるやかかつスピーディであり、スピードもやや控え目である。住宅地にはいると、エンジン音に耳を澄ませながら、路面をていねいになめてゆく感触を楽しみつつ、住人の安眠の邪魔にならない速度で走る。遊んでいる子供や散歩している老婦人に気を配る。

ROVERに乗ると、運転が丁寧になり、周囲に対してやさしくなる。何故か。人間の行動は、自分が置かれた環境、自分が受けている扱いに強く影響を受ける。乱暴な言葉を浴びれば、自分も乱暴な言葉を吐いてしまう。丁寧な扱いを受ければ、自分の周囲に対する態度も丁寧になれる。ROVERは、ドライバーを実に大切に扱い、もてなしてくれる。それだから、ROVERを運転するドライバーは、周囲の歩行者や他の車に対して丁寧に振舞うことができてしまうのだ。

そういえば、車種ごとに、ドライバーの挙動や運転マナーの傾向は似ているではないか。きっと、何かあるに違いない。


Britishness in books.

ROVERが生まれた国、英国の文化を理解するという行為はなかなか楽しみに満ちている。すなわち、読書である。林望氏の名著「イギリスはおいしい」はその代表的な一冊といってよい。巷にあふれている日本人による英国観がいかにあさっての方向にずれているかがわかろうというものである。この続編といった内容で「イギリスは愉快だ」もなかなか楽しめる。この2冊を読んで、気分が悪くなったり不愉快になってきたら、あなたは英国車を所有し、乗るということは諦めた方が幸福であると言っておこう。

さて、ここまで学習して英国文化の受け入れ体制ができたならば、「リンボウ先生の役立たずの試乗記」に進んでみよう。ローバー・サルーンこそ紹介されていないが、ROVER MINI、ROVER MGF、Jaguar XJ6、LANDROVER Discovery、ケイターハム Super7などについて、リンボウ先生らしい偏った薀蓄が楽しめる。そして、仕上げはなんといっても井形慶子著「古くて豊かなイギリスの家/便利で貧しい日本の家」である。これを読まずして、本HomePageを支えている価値観は理解できないであろう。心して読んでいただきたい。 (2000.4.20)


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