長年の懸案であった171A/71AミニワッターにBass Boost機能を追加するお話です。
<Bass Boost回路>
6DJ8や6N6Pの差動プッシュプル・ミニワッターは十分な負帰還量があるため、利得の一部をBass Boostにまわすことが可能です。しかし、71Aシングルのミニワッターは負帰還量が6dBしかありませんので、負帰還を利用したBass Boost回路を採用すると余剰利得のすべてを使い切ってしまい、超低域では無帰還状態になります。つまり、100Hz以下の帯域では歪みは増え、ダンピングファクタは低下するということです。それを承知でのBass Boost回路の追加です。
本機の負帰還回路定数は、帰還ループ側=470Ωで受け側=62Ωです。ここにBass Boost回路を追加する場合、コンデンサ容量は3.3μFくらいが適当です。回路図では3.3μFに4.7kΩの抵抗を抱かせていますが、これはほとんど意味がなく省略できます。
負帰還回路の抵抗値をもっと大きくすれば抱かせるコンデンサ容量をもっと小さくできます。6DJ8や6N6Pの差動プッシュプル・ミニワッターはこの方法を採用しています。しかし、本機でこの方法を採用すると62Ωの値を大きくすることになり、初段の利得が激減してしまします。初段が差動回路ではないシングル回路を採用した場合は負帰還回路の抵抗値を大きくすることはできないのです。
実装は冒頭の画像を参照してください。たまたま小さいサイズのフィルムコンデンサの手持ちがあったのでそれを使いましたが、このフィルムコンデンサは現在秋葉原では売られていません。通常3.3μFほどの容量のフィルムコンデンサとなるとかなりの大きさになります。そこで立てラグを追加して大きなサイズのコンデンサでも取り付けられるように工夫してあります。ケース穴を開けるのが面倒だったので貼り付け式のボスを使っています。
(注意:この改造で使用する3.3μFのフィルムコンデンサは頒布していませんので、自力で調達してください)
<周波数特性>
周波数特性を見ていただくと、低い周波数帯域では負帰還がほとんどかかっていない様子を観察できます。30Hz以下に注目してください。Bass Boostした特性(茶色)の形状が無帰還時の特性(水色)とそっくりで5〜6dBずらすときれいに重なります。