私のアンプ設計&製作マニュアル / 基礎・応用編 3.オームの法則その2 |
この章では、オームの法則について、電力(W)との関係について説明します。では早速ですが、これもまる暗記してください。P=IE・・・(電力=電流×電圧)・・・(a)「P」というのは電力のこと、「E」は電圧、「I」は電流です。ここに数字をいれてみると、8W=1A×8V・・・(1)となったり、8mW=1mA×8V・・・(2)となったりします。(1)の数値は電灯やスピーカーのパワーのレンジ(W、V、A)ですし、(2)の数値は真空管回路のレンジ(mW、V、mA)です。どちらも場合のうまい具合に桁が合ってくれます。W・・・ワット、mW・・・ミリワット。たとえば、100Wの電球をAC100Vで点灯したような場合、
1Wは1000mW。100W=1A×100Vという関係になるのはご存知のとおりですね。100Wの電球が点灯している時、その電線には1Aの電流が流れているのです。また、3極電力増幅管2A3に300Vのプレート電圧をかけ、55mAのプレート電流を流すようなオペレーションにすると、300V×55mA=16.5Wという結果になって、2A3のプレートが消費する電力(これをプレート損失という)がわかります。2A3の最大プレート損失は15Wですから、これを越えてしまうので定格オーバーになっていることがわかります。さて、この(a)式と、前章の式(E=IR)とを組み合わせると、以下のような式を作ることができます。P=E2/R・・・(電力=電圧2÷抵抗)・・・(b)この式は、次のような場合に便利です。たとえば、メインアンプのスピーカ出力のところで10Vの出力電圧が得られていて、そこに8Ωのスピーカーが接続されているような場合、10V2÷8Ω=12.5Wとなって、12.5Wのパワーであることがわかりますし、ここでスピーカーを4Ωにつなぎかえると、10V2÷4Ω=25Wとなってパワーは2倍になることが理解できます。同じ信号電圧であれば、スピーカのインピーダンスが低いほうが、大きな音響エネルギーになるわけです。また、前章で、300Vのところに470KΩの抵抗を挿入したケースがありましたが、このような場合では、300V2÷470KΩ=191mWと計算されて、470KΩの抵抗器は191mWすなわち0.191Wの電力を消費することがわかります。このことから、この470KΩの抵抗器は1/2W(0.5W)型ではやや余裕不足で、できれば1W型であることが望ましいということになるわけです。さらに(a)式を変形させて、P=I2R・・・(電力=電流2×抵抗)・・・(c)とすることで、さらにさまざまな用途に使えるようになります。たとえば、2A3シングルアンプの出力段でプレート電流を60mA流すとします。この出力段のカソードに750Ωの抵抗を入れたい場合、60mA2×750Ω=2.7Wとなって、相当な熱が出ることがわかります。1/4W型のカーボン抵抗器を使ったら発火しますし、3W型酸化金属皮膜抵抗でも100℃以上の高温になってしまってビニル線が溶けてしまうでしょう。ここでは最低でも10W型の抵抗器が必要でしょう。これまで出てきた3つの式、P=IE・・・(電力=電流×電圧)・・・(a)も計算に慣れるに従ってできるだけ暗記してください。
P=E2/R・・・(電力=電圧2÷抵抗)・・・(b)
P=I2R・・・(電力=電流2×抵抗)・・・(c)これらの式は、出力の計算、抵抗器の電力容量の計算、真空管のプレート損失の計算等アンプの設計で重要な計算がたくさん含まれているからです。
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