私のアンプ設計マニュアル / 基礎・応用編 測定器その5 (雑音特性の測定) |
<はじめに>雑音には実にさまざまなものがあります。ボリュームを操作した時にガサゴソいうのも雑音ですし、ブーンというハムも雑音です。オーディオアンプの測定でもっぱら対象となる雑音は、単発的な一過性の雑音ではなく、ブーンとかサーといった継続的で比較的安定して測定可能なものをさします。
比較的安定して測定可能なにも第別して2種類あります。それは、聞こえる雑音と聞こえない雑音です。雑音の周波数帯域は非常に広く、10Hz以下のとても音にならないゆらぎのようなものも雑音といえば雑音かもしれません。50/60Hzあるいは100/120Hzのハムは雑音の常連客といっていいでしょう。ザーとかサー、あるいはシーという雑音も言葉でいえるくらいですから聞こえる雑音の一種ですが、この種の雑音は高い周波数が特に耳につくのでそのように聞こえるだけで、実際には可聴帯域全体にわたって一様に発生しています。ラジオなどで音声に混ざってピーと聞こえる同調音も雑音といえます。CDやiPodなどでは、人の耳でぎりぎり聞こえないくらい低いレベルでデジタル雑音というのが発生しており、一定の処理をするとちゃんと耳で聞くことができます。20kHz以上の周波数帯域にも雑音はたくさんありますがこれを直接耳で聞くことはできません。しかし、オーディオアンプの設計では、高周波帯域の雑音性能はとても重要です。
<雑音測定の目的>
一般論としては「雑音」は少ないほど良いことになっていますが、測定の場面では考え方はその逆でどんな雑音がそれくらい発生しているかを調べる、という意図が働きます。雑音の性質がわかれば、その発生源や発生のしくみが推定可能だからです。
目的 方法・特徴 耳で聞こえる雑音性能を相対評価する S/N比表示がその代表。
信号の大きさと雑音の大きさの比率。
被測定アンプに入力する基準信号をON/OFFしてその比率を求める。耳で聞こえる雑音性能を絶対評価する 残留雑音や入力換算雑音がその代表。
被測定アンプから出力される雑音電圧で表示。雑音成分を分析する 周波数スペクトルで可視化する。 回路や部品の雑音性能を評価する 入力換算雑音やノイズフィギュアがその代表。
理論値に対してどの程度の雑音性能を持っているかを評価する。・・・ ・・・。
<雑音測定の方法>
オーディオ・アナライザの自動計測機能の場合は、1kHzあるいはそれに代替する基準レベルの信号を出力された状態で「S/Nボタン」を押すと、オシレータの出力がOFFになって被測定機材の入力がショートされ、その時に出力される雑音信号レベルと基準となる信号レベルとの差を計算してdB表示するしくみになっています。S/N比は、同じ機材でも測定する信号の基準レベルによって結果は異なります。残留雑音が0.05mVのプリアンプの場合、1Vを基準としたS/N比は86dBですが、0.5Vを基準にしたら80dBになります。いい数字を書きたかったら2Vを基準にすれば92dBとなります。すべて同じ意味です。
雑音の測定では、帯域をどうするか、どんな種類のフィルタを使うかを決めて測定結果には必ず表記するようにします。Leaderの電子電圧計にはフィルタは組み込まれていませんが、かといって測定可能帯域は1MHzくらいまでなので、これを使った場合は「フィルタなし、帯域は1MHz」とでも表記するのが妥当でしょう。オーディオアナライザには複数パターンのフィルタ類がついています。通常は80kHzのフィルタをかけた値が採用されることが多いようです。
私のアンプ設計マニュアル に戻る |