私のアンプ設計マニュアル / 基礎・応用編 測定器その8 (負荷とダミーロード) |
<負荷の重要性>オーディオアンプの測定でとても重要な機材のひとつに「負荷」があります。オーディオ回路の設計では必ずなんらかの負荷を想定して、それをロードラインとして図にして動作条件を検討し決定しますね。オーディオ回路の特性は負荷なしでは論じることができません。測定データを見ると、必ずといっていいくらい負荷の条件が併記されています。負荷が変化すれば、オーディオアンプの特性も変化してしまうからです。
<ダミーロードの目的>
オーディオアンプの測定では、負荷としてスピーカーなど実際に使用する機材のかわりに抵抗器などかわりの負荷を与えて行います。このかわりの負荷のことをダミーロードといいます。ダミーロードを使う理由は概ね以下のものが挙げられます。
- 発振や異常電流などによってスピーカーなどを壊さないようにするため。
- スピーカーを鳴らすとものすごくうるさくて迷惑だから。
- スピーカーのインピーダンスは周波数によって変化して一定ではないので、測定結果が影響を受けてしまうから。
- 広帯域にわたって一定の負荷特性を確保するため。
- さまざまな負荷条件を効率的に得るため。
<ダミーロードの種類>
パワーアンプの負荷としてスピーカーの代わりに使われるのが、無誘導巻きをした大型の巻き線抵抗器です。大電力用の抵抗器には巻き線抵抗器を使いますが、通常の巻き線抵抗器はコイルの一種ともいえるので非常に高い周波数では正確なダミーロードとして機能しません。ダミーロード用として無誘導巻きを行った8Ωの抵抗器が市販されていす(右画像上)。しかし、このような専用のダミーロードでなくても実は問題ないケースが結構あります。無誘導巻きが威力を発揮するのは数MHz以上の帯域です。帯域が1MHzにとどかな真空管式のアンプでは、一般的な酸化金属皮膜抵抗器やセメント抵抗器で十分に用が足ります。8Ωのものが手に入りにくい場合は、8.2Ωの抵抗器で十分に実用になります。
プリアンプやヘッドホンアンプの場合は、一般的な金属皮膜抵抗器やカーボン抵抗器で十分足ります。
アンプの安定度を検証するために、意図的に負荷と並列にコンデンサをつなぐことがあります(容量負荷という)。
<使用上の注意>
パワーアンプの試験で使うダミーロードは電熱器そのものです。最大出力が50Wのパワーアンプで最大出力試験を行った場合、ダミーロードは50Wあるいはそれ以上の電力を消費して非常に熱くなります。50Wというと中大型のハンダごてと同じです。ダミーロードには100Wクラスのものが必要になります。本サイトの記事のミニワッターであれば最大出力は1W前後なので8.2Ωの5W型の酸化金属皮膜抵抗で十分です。被測定アンプに異常が生じてダミーロードが過熱したり焼損することがありますので、ダミーロードは過熱しても大丈夫な場所に配置してから試験を行います。但し、アンプの出力端子とダミーロードをつなぐ線材が長いとリードインダクタンスや線間容量が生じてダミーロードとして正確な働きをしなくなります。
私のアンプ設計マニュアル に戻る |