私のアンプ設計マニュアル / 部品購入・調達ガイド 1.「秋葉原」の歩き方 |
はじめに
すでに何度も秋葉原など部品店を訪れている方は本章をお読みいただく必要はありません。本章は、はじめて部品を購入しようと思っているが一体どこに行ったらいいかわからない、行ってみたが冷たくあしらわれた、どう接したらいいかわからない、アニメやゲーム関係の店ばかりで一体どこにあるのかすらわからない・・・そんな方のためのガイドです。
秋葉原は終戦直後、ラジオの普及とともに総武線ガード下に部品店が集まりはじめ、そこに米軍放出の部品なども流通することで一気に部品店の集中が起きてその名が知られるようになりました。私が幼稚園の頃、電気技師である叔父が電蓄を作ろうとして父と一緒に部品を買いに出かけたのも秋葉原でした。部品店のいくつかはそういった時代から営業を続けているものもありますが、いずれも家族経営のような小規模店であり最近は後継者がなくなるとともに廃業も目立つようになりました。一方でそれなりに企業化して経営を拡大している店、最近になって登場した店もあります。全般的にはアニメ、ゲーム、パソコン、メイド・・・といった新興マーケットに押され気味という感じがします。
部品購入の心構え
値段はあってなきがごとし電子部品は基本的に産業のための直材ですので、購入者は企業の資材課であり、数百個、数千個、数万個単位で見積もり・納期回答の上で発注・・・という取引が基本です。従って、いわゆる定価というものはありません。それらを一般個人のために分けてもらえる場所が秋葉原です。たとえば、トランジスタは1本あたり数円程度で取引されますが、それは1000本以上購入する場合の話で、これを2本とか10本とか袋に入れていちいち代金を払う、なんていうことをしていたら1日頑張っても売り上げは数千円にもならず店は倒産してしまいます。秋葉原で、トランジスタ1本の販売価格が50円とか100円とかするのはそういう手間を入れて店なりに価格を設定しているからです。ためしに200本購入してみてください、何も言わなくても何割かまけてくれるはずですし、一箱(たとえば2000本入り)買ったら1本あたりの価格は数分の1以下になるでしょう。
ということは、1本ずつ購入する場合でも店によって価格はかなり違うということになり、事実、部品によっては数倍くらいの価格差があります。そのため、別に店に立ち寄って「あれ、この店はさっき買ったみせより2割安いなあ、損したよ」なんて気にしていたらきりがありません。いくらで買うかは自己判断、自己責任の世界だということを忘れないでください。
立地で値段が変わる
秋葉原の部品店は2店舗以上を持っているところが多いです。春日無線変圧器は2店舗、瀬田無線は3店舗、門田無線は2店舗、トモカは3店舗といった具合。店を選ぶポイントは、同じ経営でも駅に近い店や便利なところにある店ほど設定価格が高いということです。また、店名が違っていても実質同一経営という店もあります(もちろん、価格設定は同じではない)。
メーカー供給用と個人向け
部品には、今でも普通にメーカーが使用しているものと、メーカーが使うことはなくもっぱら自作用に供給されているものに大別されます。オペアンプやダイオード、抵抗器、コンデンサ、ビス・ナット類の多くは前者です。真空管や古い型番の半導体は後者に属しますし、350V以上の耐圧のアルミ電解コンデンサや出力トランス、オーディオ用ジャンク部品のほとんどは後者に属します。当然、前者はいくらでも廉価に購入可能ですが、後者はおしなべて高価です。
「型番(品名)」と「数量」だけを伝える
秋葉原の部品店の多くは無愛想です。秋葉原の店にやってくるのは、自作オーディオをやる人よりもメーカー関係や研究開発関係者の方が多いのですが、自作オーディオをやる人はうるさいことを言う割に散々迷って結局買わなかったり、買ってもちょっとだけ、というケースが多いので面倒な割に儲からないため無愛想になるんではないかと思います。私は、簡潔に「XXX持ってますか」という風に型番を言って在庫の有無を聞く程度ですし、購入の際も黙って自分でトレーに入れて手渡すか、品名と数量と領収書の有無を言うだけです。そういう買い方をすると、店側の動きもスムーズでものごとがすいすいと運ぶようになり、しかも愛想が良くなります。
部品屋で音のことを聞くな
部品店の店主のほとんどはオーディオ趣味がありません。ですから2種類の真空管のどちらが音がいいかとか、このコンデンサはどんな音がするかとか、そういう質問はするだけ無駄です。もし、その種の質問に熱心に答える店員がいたら、まあ大概はデタラメを言ってますので耳を貸してはいけません。音は自分で判断してください。
オーディオ談義禁止
店側は売るのが仕事であって基本的に「音には興味がない」のですから、オーディオ部品を扱っているからといって「店主もオーディオ好き」だと思って趣味の話題を振ってはいけません。「店頭でのオーディオ談義は禁止」です。次のお客が待っているのにレジを占拠してぐだぐだと店主に話しかけているお客は大迷惑。
店によっては、「音が、音で、音だ」なハイエンド・オーディオ・ファンを狙ってビンテージ部品、希少部品、オカルト部品を中心に扱っているところがありますが、そういう売り場に近づくかどうかは完全に自己判断の世界です。ちなみに、その種の部品購入に関しては当サイトは一切サポートしません。
キー・ポイント店
自作オーディオのための部品を多く扱っている店で当サイトの掲示板などで良く出てくる店をいくつかご案内しておきましょう。全くはじめての方はとりあえず以下にご紹介する店をたどってみれば、本サイトで使用している部品はすべて入手可能だと思います(一部、特殊な部品、廃品種を除く)。<真空管>
アムトランス(ラジオセンター1F)・・・価格がリーズナブルかつ品質管理がよくできている。
サンエイ電機(ラジオデパート3F)・・・なともなものを能書きなしに廉価に売ってきた優良店。こことの付き合いは長いのですが、店主は病を患って2012年に他界されました。合掌。今は息子さんが休日に限り店を開けてくれている。値段は以前のままのものもあるが、すこし上げてきたような気がする。<トランス>
東栄変成器(ラジオセンター1F)・・・廉価であることが信条のオーディオ・トランス、汎用トランスを扱っている忘れてはならない店。アホな質問にも一応対応してくれる。
春日無線変圧器(ニュー秋葉原センター1F)・・・廉価なオーディオ・トランス、キットのおいしいところを狙って出してくる店。小出力真空管アンプ作りに欠かせない店。ミニワッター用の電源トランスとPP用出力トランスを扱ってくれている。特注しても廉価。真空管も多く扱っている。
ノグチトランス販売(ラジオデパートB1)・・・小型から大型までいろいろ、ISO(TANGO)、TAMRA、ハシモトを扱う。店主は人はいいんだが自他共に認める無愛想。<一般部品>
千石電商(千代田区外神田1-8)・・・おそらく安さで秋葉原No.1。とりあえずここで探してみてなかったものを他店で探すのが効率的。レジを打ってしまったが最後、店側のミスだろうが何だろうが交換には一切応じない。安い=自己責任。千石電商の問題点は、(1)欠品率が高くせっかく買いに行っても引き出しの中がからっぽなことが多いことと、(2)引き出しの中に誤った値の部品が混ざっていることが多い(1個や2個ではないので店員が間違えてドサッと入れてしまう)ことでしょうか。対策としては、ここになかったら何処で買うみたいな代替店をおさえることと、手に取った部品の値は必ず目で確認することです。
秋月電子通商(千代田区外神田1-8)・・・知らぬ人はいなくくらい有名。品揃えは偏るがあればバカ安。千石と違って在庫管理がしっかりしており、通販の手際も良い。
門田無線(ラジオデパート3F)・・・CR以外のスイッチ、端子、ボリューム類が充実。価格もリーズナブル。毎回2000円以上を買う常連になると割引カードをくれる。
瀬田無線(ラジオデパート2F)・・・CRの一般品の品揃えが豊富。ディップマイカを持っている。
海神無線(ラジオデパート2F)・・・オーディオ・グレードのCRが充実。
小林電機商会(ラジオデパート1F)・・・店舗は小さいがCR以外の構造部品が充実。
三栄電波(ラジオセンター1F)・・・Cおよびボリュームが特に充実。
鈴商(千代田区外神田1-6)・・・ジャンク的部品の宝庫?千石と秋月の品揃えの穴を微妙に埋めてくれる。<ケース、シャーシ、その他>
奥澤(ラジオデパートB1)・・・ここに頼めば大概入手できる。加工もする。
エスエス無線(ラジオデパート2F)・・・品揃え豊富。
西川電子部品(千代田区外神田1-9)・・・ネジといえばここです。眼光鋭いおじさんが並ぶ売り場は壮観。最近は土休日も営業している。上記以外にも店はたくさんありますし、ここですべてをご紹介できるわけではありません。とりあえず、これらの店を巡って価格の感じをつかみながら他店ものぞいてみたらいいでしょう。その途中には真空管の店や半導体の店もかなり目にはいると思いますので、立ち寄ってみてください。
部品以外の店舗
東洋東計測器(計測器ランド)(千代田区外神田1-3)・・・中古測定器が充実しているが、新品も結構まけてくれる。
トモカ(東京都千代田区外神田1-2-13 秋葉原ラジオ会館2号館 2F-3F)・・・レコーディング機材、コネクタ・ケーブル類。3店舗あるが、駅に近い店ほど値段が高い。
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