音量を調整するためのボリューム回路では、入力インピーダンスはそのボリュームの抵抗値とほぼ同じ値になりますが、出力インピーダンスはボリュームポジションによって変化します。その様子を回路図で表したのが右図です。ボリュームの抵抗値はオーディオアンプでよく使われる50kΩで、減衰カーブはA型とします。話を簡単にするために、ボリュームの後続には負荷はないものとします。
A型のボリュームでは、14時半くらいのポジションで入力側の抵抗値とアース側の抵抗値の比率が50%:50%(25kΩ:25kΩ)になり、12時のポジションでは入力側が86%くらいでアース側が14%くらい(43kΩ:7kΩ)になります。
<入力インピーダンス>
まず、ボリューム回路の入力インピーダンスについて考えてみます。ソース側からこボリューム回路を見ると、どのポジションであっても50kΩです。ボリューム回路では、ポジション関係なく入力インピーダンス=ボリュームの抵抗値となります。
<出力インピーダンス>
出力インピーダンスは、入力側の抵抗値をRin、アース側の抵抗値をRgndとおくと、以下の式で求めることができます。これは2本の抵抗による減衰回路の出力インピーダンスを求める一般式ですので是非暗記してください。
出力インピーダンス=(Rin×Rgnd)÷(Rin+Rgnd)この式を使って右図の4つのポジションの出力インピーダンスを求めると以下のようになります。
出力インピーダンスが最大になるのは、14時半ポジションすなわち入力側の抵抗値とアース側の抵抗値の比率が50%:50%(25kΩ:25kΩ)となる時です。そして出力インピーダンスの値はボリューム抵抗値の1/4(=12.5kΩ)です。
- MINポジsジョン: 0Ω
- 12時ポジション: 6.02kΩ
- 14時半ポジション: 12.5kΩ=ボリューム抵抗値の1/4
- MAXポジション: 非常に低い=ソースインピーダンス=0Ωとみなす
<ボリュームの後ろに負荷がある場合>
現実の回路では、ほぼ確実にボリュームには後続する回路があり、その回路の入力インピーダンスがボリュームから見た負荷になります。
右のグラフは、50kΩのボリュームに後ろに470kΩと100kΩの負荷を置いた時に、ボリュームポジションによってボリューム回路の入出力インピーダンスがどう変化するのかを計算で求めたものです。
470kΩのケース:
入力インピーダンスは、12時から上で少しずつ下がり始め、MAXポジションで最も低くなります。その時の値は既出と同じ式で求めることができ、(50kΩ×470kΩ)÷(50kΩ+470kΩ)=45.2kΩとなります。出力インピーダンスは大体14時半(正確にはすこしずれる)で最大になり、その値は約12.2kΩです。
100kΩのケース:
入力インピーダンスは、470kΩの時よりも下がり方が顕著で、やはりMAXポジションで最も低くなります。その時の値も既出と同じ式で求めることができ、(50kΩ×100kΩ)÷(50kΩ+100kΩ)=33.3kΩとなります。出力インピーダンスは大体14時半(正確にはすこしずれる)で最大になり、その値は約11.1kΩです。
以上のことから、入力インピーダンスを高い値で一定に保ちたかったら、後続する負荷インピーダンスはボリュームの抵抗値よりも十分に大きな値にすればいいことがわかります。出力インピーダンスの最大値は後続する負荷インピーダンスの影響をあまり受けないこともわかりました。