お茶は嗜好の世界です。だから、人それぞれ口にあうお茶があると思います。そして、お茶は、産地ごとにおどろくほどの個性があります。自分に合うお茶に出会えるということは、その人の人生をわずかでも幸福で豊かなものにすると思います。我が家にとって、一保堂の宇治の煎茶の凛とした、背筋の通った香りと味わいは、その幸福感の源泉のようにも感じられます。
正池の尾(しょういけのお、右画像)は我が家の基準茶で、これにはじまってこれに終わるという感じがします。一保堂のテイストを最もわかりやすく代表しているお茶だと思います。
そして、初夏に届けられる新茶や、お正月に一年の健康を願って飲む大福茶(おおぶくちゃ)が季節の節目を思い出させてくれます。
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店先のサービスで出される煎茶の急須と茶碗は一見して清水焼きとわかるすっきりと洗練された格調の高いものです。しかし、お店使いのものですから販売してはくれません。これが、京都萬珠堂の手になるものであるところまで付き止めたうちの奥さんは、当の萬珠堂まで足をはこんだものの、丁寧に断られてしまいます(あたりまえだ)。ある日、意を決した彼女は、再び新幹線に乗り、寺町二条にある一保堂茶舗本店に乗込みます。そこでどういうやりとりがあったのかは詳しく知りませんが、同席した娘の報告によると、「あんな気迫のあるママを見たははじめて。」だったそうです。その茶器は、今、我が家の家宝となっております。(一保堂さん、うちのママがわがまま言ってごめんなさい。)
この一保堂茶器事件には、上の画像に写っている茶托を巡っての後日譚があります。
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この茶器は、今は一保堂さんのオンラインショップで買い求めることができます。