私が自作オーディオをはじめた頃、アマチュア(初心者)にとってのオーディオ増幅管といえば12AX7、12AU7、6AU6、6267に決まっていました。高域の帯域特性の重視や回路の低インピーダンス化などという話題はまだまだメジャーではなかったように思います。しかし、半導体アンプが登場するとアンプの入力インピーダンスの基準も、これまでの常識であった500KΩ前後から一気に25〜50KΩに下がってしまいました。アンプの低雑音化や広帯域化の要求も回路の低インピーダンス化に拍車をかけました。高インピーダンス回路で高S/N比や広帯域を得るのは困難だからです。6DJ8(原種は7DJ8)は、そもそもカスコード接続で高周波回路に使用するために開発された低雑音低rp高gm管ですが、この低雑音低rp高gmという性質が今日の真空管オーディオ回路の要求にぴったり合ったために、メーカー製アンプにおいても重用されるようになったのでしょう。12AU7や6SN7GTと比較すると、rpは低く、μはやや高く、Cg-pは小さい、フレーム・グリッド構造なので振動によるノイズが小さい、という願ってもない特徴を持っています。2つのプレート間にシールドを持っているという点も見逃せません。
一方で、gmが異常に高い(高μ、低rpなんだからあたりまえ)球の常として、油断すると簡単に発振します。
6DJ8(7DJ8)と同一(あるいはほとんど同一)特性を持った球には、6922、7308等がありますが、ヒーターの規格に若干の違いに注意すれば、そのまま差し替えができます。
Name 6DJ8
7DJ8
ECC88
PCC886922
E88CC7308
E188CCBase MT9 MT9 MT9 Type Tri Tri Tri Tri Tri Tri I I I Eh 6.3V
7.0V6.3V 6.3V Ih 0.365A
0.3A0.3A 0.335A Cin 3.3pF 6.0pF - - - - Cout 1.8pF 2.8pF - - - - Cgp 1.4pF 1.4pF 1.4pF 1.4pF - - Ebb max 550V 550V 550V 550V 550V 550V Ep max 130V 130V 220V 220V 250V 250V Pp max
both units1.8W 1.8W 1.9W 1.9W 2.0W 2.0W - 2.0W 2.2W Rg1(F) max 1M 1M 1M 1M 0.5M 0.5M Rg1(C) max 1M 1M 1M 1M 1M 1M Ehk(K+) 150V 120V 150V Ehk(K-) 150V 60V 100V Eb 90V 250V 90V 90V Eg1 -1.3V -8V -1.44V -1.44V Ip 15.0mA 15.0mA 12.0mA 12.0mA gm 12.5 12.5 11.5 11.5 rp 2.64k 2.64k - - μ 33 33 - - pin connection 2P(1),2G(2),2K(3),H(4),H(5),
1P(6),1G(7),1K(8),IS(9)2P(1),2G(2),2K(3),H(4),H(5),
1P(6),1G(7),1K(8),IS(9)2P(1),2G(2),2K(3),H(4),H(5),
1P(6),1G(7),1K(8),IS(9)
2本測定してみたのですが、Eg=0Vの時の立ち上がり具合が異なるために、Ep-Iptく性カーブ全体が左右にずれていますが、カーブの形はきれいに揃っています。真空管の特性のばらつきの多くは、このようなEp-Ip特性上の左右のズレとして現れます。球の特性の素性はほとんど同じなのに、特性の原点がずれているだけ、というものです。測定サンプルのどちらもケースも、バイアスが深くなってもμが一定しており、またカーブの立ち上がりも甘くならないことからもこの球の直線性の良さがうかがわれます。Ip=2mA以上(できれば3mA以上)で動作させてやれば、安定した特性が得られる球だということがわかります。
ここでも2本測定してみました。若干μの開き加減が異なりますが(ブルーの個体の方がμはちいさい)、それでも全体の形はよく揃っています。東芝製6DJ8ともおどろくほどよく似ています。同一管種でも製造メーカーが異なれば特性曲線は相当にバラツくものですが、グリッドの精度が難しい構造のこの種の球にしては精度の高さに目をみはりました。6DJ8/6922を生かすには、高い動作電圧はだめで70〜120Vくらい(高くても150Vどまり)が良く、また2mA以下の少ないプレート電流の動作もよくありません。