アンプや電子回路の電源の設計いつもわからなくて困るのが「この電源トランスを使ったら電源電圧は何Vになりそうか」という問題です。電源トランスの2次巻き線やタップには「0-230V」という風に電圧が表記されてはいますが、単純にそのとおりの電圧が出ているわけではありませんし、整流後の電圧も同様です。仕様をきちんと提示して電源トランスを特注すると、指定した負荷電流を取り出した時に正確に指定した電圧になるように作ったものが納品されますが、市販の汎用電源トランスはかならずしもそのような仕様ではないように思います。また、各社ごとに設計基準や設計の考え方が異なるようなので、決まったルールがありません。そこで、ある本を執筆したのをきっかけにいくつかの電源トランスについて実測データを公開することにします。
真空管式ミニワッターで使用した春日無線変圧器の一連の30VAシリーズおよび同じサイズの東栄変成器のPT35の実測データです。
メーカー 型番 取付けビス間隔 開口部 1次 2次(高圧) 2次(ヒーター) 春日無線変圧器 KmB60F 57×46 45×39 100V 0-230V(AC60mA、DC38mA) 0-6.3V(AC1.5A)
0-6.3V(AC1.5A)春日無線変圧器 KmB90F 57×46 45×39 100V 0-185V-195V(AC80mA、DC50mA) 0-6.3V-12.6V-14.5V(AC0.9A) 春日無線変圧器 H9-0901 57×46 45×39 100V 230V-0V-230V(AC50mA、DC50mA) 0V-6.3V(AC0.9A)
0V-6.3V(AC0.9A)春日無線変圧器 H12-0429 57×46 45×39 100V 160V-0V-160V(AC65mA、DC65mA) 0V-6.3V-12.6V(AC1A) 春日無線変圧器 H24-0101 57×46 45×39 100V 0V-150V(AC135mA、DC85mA) 0V-6.3V(AC1.5A) 春日無線変圧器 H17-04211 57×46 45×39 100V 130V-0V-130V(AC80mA、DC80mA) 0V-6.3V(AC1.5A) 東栄変成器 PT35(廃番) 58×48 45×39 90V、100V 0-230V(AC35mA、DC22mA) 0-2.5V-6.3V(AC2A)
0-5V(AC0.5A)
右のグラフは整流出力特性の実測データです。
電源トランスの整流出力電圧は取り出す電流値が大きいほど低下します。電源トランスに2つ以上の2次巻き線がある場合は、他の2次巻き線から取り出す電流の状態によって、その2次巻き線の電圧も変化します。
「無負荷」というのは、他の2次巻き線が全く遊んでいる(電流を取り出していない)状態で測定したデータです。「全負荷」というのは、他のすべての2次巻き線から定格一杯の電流を取り出している状態で測定したデータです。
無負荷:他の2次巻き線は無負荷の状態で、当該2次巻き線にのみ負荷をかけたデータです。当該2次巻き線の整流出力特性は、他の2次巻き線の負荷の状態によって、破線と実線の間のどこかになるわけです。
全負荷:他の2次巻き線に定格一杯の負荷をかけた状態で、当該2次巻き線に負荷をかけたデータです。注意:右のデータは定格電流を少し越えたところまで線が引いてありますが、そこまで安全に使用できるわけではありません。実際に使用する時は各電源トランスの定格以内で使用してください。
データの取りの条件が一定ではないので説明を要します。B6S12WCDの場合は倍電圧整流した時のデータです。ブリッジ整流した場合は、電圧は1/2、電流は2倍の値に読み替えることで概ね正確な値が得られます。Z-5VAはブリッジ整流した時のデータです。破線は5VAとして計算した時の取り出せる最大電流値です。倍電圧整流した場合は、電圧は2倍、電流は1/2の値に読み替えることで概ね正確な値が得られます。B6S12WCD→ ←Z-5VA
メーカー 型番 取付けビス間隔 1次 2次(高圧) 2次(ヒーター) 春日無線変圧器 B6S12WCD 75 0-90V-100V-110V 0-100V-110V(AC120mA) 0-6.3V(AC1.2A) 東栄変成器 Z-5VA 60 0-90V-100V-110V 0-100V-110V-115V(DC31mA〜28mA〜27mA) ---