■■■USB DAC+Bluetoothレシーバー Version4.0■■■
真空管式であること、入手が難しいライン・トランスを使わないこと、USB DACとしてBluetoothレシーバーとしてその両方としても使える回路であることを目標にして設計を進めてきたDAC+Bluetoothレシーバー Version4.0です。もしこんな病気を発症しなかったら、今頃は完成して記事になっていたかもしれません。これから組み立てて検証しつつチューニングを行うつもりで平ラグ・ユニットを組んだところで作業がストップしてしまったのです。そろそろキーボード操作も危なくなってきましたが、できる限り回路全体について書ける範囲で記事としてまとめようと思ってこれを書いています。
* * * もし可能であるならば、測定環境がある方に引き継いでいただけたらとも思っています。そのために、Rコア電源トランスなど必要な部品一式を2セット用意してあり、1セットは試作用、もう1セットはその方ご本人用としてお渡しします。症状の進行とともにいつまでこの記事を更新できるかわかりません。このめんどくさいことにお手伝いいただける方がいらっしゃいましたらお知らせください。おかげさまで、このプロジェクトが継続できそうです。業界のプロの方に支援していただけることになりました。時間がかかるとは思いますがなんとか形にできたらと思っています。そのほかの方からの支援のオファーをいただきました。感謝に堪えません。ありがとうございます。(2019.9.18)
* * * ついに完成しました。本機の完成にご尽力頂いただいたのはAIR-G'(FM北海道)技術部のYさんです。AIR-G'の現場では、FET差動ヘッドフォンアンプやトランス式DACが使われています。昨日(2020.2.17)、わざわざ札幌から私のところまで持ってきて設置してくださいました。音を出してすぐに本機の音の良さに二人して声が漏れました。この回路は、AKI.DAC、Bluetoothどちらでも共通して使用できます。Bluetooth基板の仕様が変わってしまってあてにならない今、AKI.DAC用として今後も多くの方に楽しんでいただきたいと思っています。
<Bluetoohレシーバーとして>・・・このホームページに掲載した記事で使用したBluetooh基板は回路定数が変更されたため、記事中のデータが使えなくなりました。新たに同じ基板を入手して製作する場合は、自力で基板の回路を解析してチューニングし直すだけの技術力と測定機材が必要です。但し、記事で使用したのと同じ基板をお持ちの場合はこの限りではありません。<USB DACとして>・・・本機の回路は、設計変更することなくそのままAKI.DACに適用できます。AKI.DACは回路仕様がわかっているので誰が作っても高い再現性が得られます。製作されるのであればAKI.DACベースのUSB DACをおすすめします。
<全体の構成>・・・Version3と基本的に同じ本機のベースとなったのはUSB DAC+Bluetoothレシーバー Version3.0ですので、基本構造は全く同じ、異なるのは半導体式か真空管式かの違いだけです。
<LPF(ローパスフィルタ)は共通化できる>・・・(V3と同じ)
AKI.DACC基板もBluetooth基板も共通してそれなりの音は出るものの盛大なデジタルノイズが漏れており、これが音のクォリティを著しく下げています。デジタルノイズが分布する帯域は若干異なりますが、いずれにしても22kHzから上をカットすることで改善できますから、LPF(ローパスフィルタ)は基本的に同等のものでよいことになります。
<出力信号レベル>・・・(V3と同じ)
AKI.DACの信号出力レベルは、0dBFSにおいて0.63Vですが、これまで製作してきたBluetooth基板の信号出力レベルは0dBFSにおいて1.0V〜1.9Vです。同じアクティブフィルタ・アンプを使うとすると、Bluetooth側にアッテネータを入れるか、両者の信号出力レベルを揃えるか、ソースによってアクティブフィルタ・アンプの利得を変えるか、とにかく何らかの方法で出力信号レベル合わせをする必要があります。アッテネータを入れるとソース・インピーダンスが変わってしまうのでLCフィルタが正常に機能しなくなるため話がちょっと面倒になりますし、アクティブフィルタ・アンプの利得をソースごとに変化させる方法は更に厄介です。本機では、Bluetooth基板の信号出力レベルをAKI.DACと同じレベルまで下げることで共用化を実現しています。
<電源の供給>
AKI.DACはUSBのVBUS電源(約5V)を流用していますが、Bluetooth基板はDC12V〜15Vを必要とし、アクティブフィルタ・アンプは240V以上の高圧電源と-13V程度のマイナス電源を必要とし、さらに真空管のための12.6V/0.45Aのヒーター電源も必要です。ヒーター電源には+50VほどのバイアスをかけなければならないのでBluetooth基板の電源と共用できないという制約もあります。これら4つの異なる電源を矛盾することなくコンパクトに構成しなければなりません。
<LED点灯>・・・(V3と同じ)
各種インジケータとしてのLEDの扱いはちょっと工夫が必要です。
AKI.DAC・・・USB接続が行われているかどうかのインジケータ。USB接続の有無によって「消灯/点灯」。前面パネル側は電源ON/OFFのインジケータのみとし、USB接続とBluetoothペアリングのインジケータは後面パネル側としました。何故ならば、USB接続やBluetoothのペアリングの状態は常時把握・監視する必要はないということと、Bluetoothのペアリングをしない使い方をする場合にLEDが点滅しっぱなしになって目障りだからです。LEDをどう扱うかは製作者の好みでアレンジしたらいいでしょう。
Bluetooth・・・ペアリングしているかどうかのインジケータ。ペアリングの有無によって「点滅/点灯」
電源・・・本機の電源のON/OFFのインジケータ。OFF/ONで「消灯/点灯」。
製作で使用したAKI.DAC基板について「AKI.DAC-U2704 (秋月電子のDACキット) の使い方」に重要な解説がありますので必ずお読みください。
製作で使用したBluetooth基板について「Version1.0・・・LCフィルタ」に重要な解説がありますので必ずお読みください。このシリーズを始めた当初は、Bluetooth基板はType1とType2の2種類しかなく識別法も簡単でした。しかし、その後仕様が異なる何種類かの基板が同じ業者から販売されるに及んでとうとう手に負えなくなりました。なお、このBluetooth基板は技術基準適合証明番号(電波を発する通信機器に要求される技術的な確認許可の証明)の表記や技適マークの表示がありません。本基板の販売者に対しては、現在技術基準適合証明番号・技適マークを表記する、あるいは技術基準適合証明番号の取得するように通知を行いました。本基板の使用にあたっては、現在十分に合法的な裏づけが得られていないことを認識してください。関連する解説はこちらにあります。
<USB-DAC基板のアレンジ>・・・(V3と同じ)重要な変更点は2つです。一つめは低域の左右チャネルクロストークを支配しているC11の増量で、二つめは出力回路の変更です。AKI.DACのオリジナル回路は出力が47μF(C5,C6)の出しっぱなしになっています。この状態でUSB-DACとBluetoothの切り替えを行うと大きなポップノイズが出ます。そこでC5,C6の電荷を逃がす抵抗器(10kΩ)を出口側に追加しました(右の画像の赤で囲んだ部分)。さらにおまけ程度ですが基板上の他のコンデンサについても若干の変更を行っています。
回路図部品名 キット付属 変更後 C5 47μF/25V 出口側のアースとの間に10kΩを追加 C6 47μF/25V 出口側のアースとの間に10kΩを追加 C11 47μF/35V 1000〜1500μF/10V C14 470μF/25V 1000μF/16V C16 100μF/35V 220μF/10V C17 100μF/35V 220μF/10V
<Bluetooth基板側のアレンジ>・・・(V3と同じ、この解説が有効なBluetooth基板は限定的です)
NE5532アンプの利得を下げつつ低域の減衰を補償する回路定数をカット&トライで求めたところ、1μF+4.7kΩに落ち着きました。0dBFSにおける出力信号レベルは、AKI.DAC側とBluetooth側がほぼ同じになりました。
2.2kΩは33Ωでバイパスさせます。これはDACの基本特性がAKI.DACとBluetoothとで10kHz以上の帯域で微妙に異なるのを微調整するためです。LCフィルタ(2.7mH+8200pF)からみたソース・インピーダンスが、AKI.DACの時は360Ωであるのに対して、Bluetoothの時は393Ω(=33Ω+360Ω)とやや高めになるようにチューニングしています。リレーで切り替わる外部入力は使用しないので、そちらに切り替わった時にオープンにならないようにショートさせておきます。電源ノイズの低減のための470μF/16Vの取り付けについてはVersion1と同じですので詳しい解説はVersion1を参照してください。
補足情報(2019.9.5):
回路定数が異なる3番目の個体がみつかったという報告がありました。入力抵抗が8.2kΩから10kΩに変わり、負帰還抵抗47kΩと並列の82pFが10pFに変わったようです。この基板をそのまま下図のようにアレンジすると200kHで発振したので、82pF〜100pFしたところ発振は収まったとのことです。この個体に当たってしまった場合、面実装の10pFを交換するのは困難なので82pF〜100pFを空中配線で追加してください。
<LCフィルタとアクティブ・フィルタ回路>
アクティブ・フィルタの回路は12AX7の単段差動回路に12AU7(1/2)のカソード・フォロワを追加したものです。回路の基本構造は「USB DAC+Bluetoothレシーバー Version3.0」と同じで、FET+トランジスタが真空管に置き換わっただけです。
回路図中の鉛筆書きが当初の暫定設計値で、赤字が最終決定値および実測値です。12AX7の2つのプレート負荷抵抗は、使用した定電流素子の値によって160kΩ〜360kΩの範囲で変わります。回路図中の300kΩの値を鵜呑みにしないでください。
<定電流回路>
12AX7差動回路で使用する定電流回路には2SK30A-Oランクを選別して使用します。幸いにして12AX7はプレート電流依存が低い球なので、プレート電流値の許容範囲はかなり広いです。Oランクの2SK30Aについては入手が困難なので、まとまった数量のの頒布を予定しています。
2SK30A-OのIdss値が0.7mAから1.3mAであった時の12AX7の1本あたりのプレート電流は0.35mA〜0.65mAになりますが、その時のプレート負荷抵抗値を右の表にまとめました。計算の考え方は簡単で、次段と直結する都合で12AX7のプレート電圧が105V〜115Vあたりになるような条件を求めています。12AX7という球は幅広いプレート電流、プレート電圧の範囲で安定したパフォーマンスが得られるのが特徴なのでこのような幅広い条件設定が可能です。プレート電流が多い時にプレート電圧を高めにしているのは12AX7のグリッド電流の影響を考慮したからです。
2SK30A-Oを使わずにトランジスタで定電流回路を組む場合は次のようにするといいでしょう。マイナス電源を作っている24kΩを「22kΩ+1S2076A×2」に置き換えます。2本の1S2076Aの両端には1.18Vが生じますから、そこに2SC1815-GRのベースをつなぎます。この時の2SC1815-GRのベース〜エミッタ間電圧は0.62Vくらいです。エミッタ〜-13.6Vの間に560Ωを挿入すれば、1.0mAの定電流回路の出来上がりです。「22kΩ+1S2076A×2」は左右チャネルで共用できます。(この計算の根拠となるデータはデータライブラリにあります)
<チューニング事項>
アクティブ・フィルタ特性の時定数は、LCフィルタの2.7mHと8200pF、アクティブ・フィルタの18kΩと220pFの2つで決定されます。減衰が始まる肩特性の状態は、2.7mHのDCRと360Ωとソース・インピーダンス(実質0Ω)、それから22kΩと18kΩによる帰還比率で決定されるので、これらを微調整することでチューニングできます。利得は負帰還抵抗(47kΩと22kΩ)の比率と裸利得の関係によって決まります。但し、チューニング前の暫定値なので、実機による検証と回路定数の見直しが必要です。
10kHzから上の帯域が持ち上がるようでしたら、22kΩを24kΩに増やしたり18kΩを16kΩに減らす方向での比率の調整が必要となり、10kHz以上で減衰が生じるようであれば逆の方向での比率の調整が必要になります。こればかりはやってみないことにはわかりません。
この部分のチューニングが未完成でしたが、FM北海道技術部のYさんのご尽力の結果、適切な回路定数(22kΩと18kΩ)を得ることができました。
<電源部>
主電源として2つの電源トランス巻き線を使います。AC100V(データは102Vの時のもの)を倍電圧整流して得た290Vほどのリプルを除去してから、+243V〜250と−13.6V〜14.2Vに2分割してアクティブ・フィルタに供給します。真空管のヒーター電源はAC12V〜AC12.6Vをブリッジ整流して得ています。12AU7のカソード電圧がアースに対して約110Vとかなり高いので、ヒーター電源には56V〜58Vのプラス・バイアスをかけています。
Bluetooth基板への電源供給はDC12V〜15Vですが、ヒーター電源はプラス・バイアスがかかっているためにそのままつなぐことができません。そこで絶縁型のDC-DCコンバータのMCWI03-12D12またはMCWI03-12S15を使うことにしました。
追記:ここで厄介な問題が発生しました。Bluetooth側から原因不明のノイズが出たのです。このノイズの発生源はDC-DCコンバータで、DC-DCコンバータの入力側のスイッチング・ノイズが真空管のヒーター回路に逆流したのでした。DC-DCコンバータの入力側にLCフィルタを入れても効果がなく、2〜3ターンに巻き付けたフェライト・コアを入れることでようやく十分な低ノイズ性能を得ています。真空管のヒーター電源を流用しないで別途専用の電源を用意すればこの問題は生じません。
ヒーター電圧調整用に追加した0.33Ωですが、回路図(実測電圧記入)では2W型になっていますが、平ラグの実装図では1W型です。試作時の手持ちの0.33Ωが2W型のものでしたのでこうなっていますが実用上1W型でも大丈夫です。
電源トランスは、とりあえず特注したプリアンプ用のRコア電源トランスを使いますが、この電源トランスの頒布はすでに終了しているため、新たに製作するためには代替の電源トランスを探さなければなりません。
高圧電源側は、東栄変成器のZ-5VA(P/0-90V-100V-110V:S/0-110V-110V-115V)で代替可能で、1次側=0-100V、2次側=0-110Vで使うと回路定数を変更することなく使うことができます。
ヒーター電源側は、東栄変成器のJ-121(100V:12V/1A)です。3.9Ω/3Wを3.3Ω/3Wに変更することで置き換えが可能です。J-121は高さが54mmあるため、本機で使用したLEAD製のケースには収まりません。ヒーターを交流点火すれば0.5Aで足りるので東栄変成器のJ-1205(100V:12V/0.5A)を使うことができケースに収まります。ヒーターハムが出るか出ないか、そこのところは検証できていません。
ヒーター電源を15V/1AくらいのACアダプタの中身を取り出して使う方法もあります。電圧ドロップ抵抗は、5.1Ω5Wがちょうどいいです。12VのACアダプタですとドロップ抵抗がないために突入電流が大きすぎてACアダプタが正常に動作しません。
1つの電源トランスで済ますのであれば、春日無線変圧器のKmB90FまたはKmB90Tの195V巻き線と12.6V巻き線がほとんどそのまま使えます。
<DAC部品>AKI.DACキット基板・・・おなじみ秋月電子通商のUSB-DACキットです。仕様データが信頼できるので、本回路を製作される場合はBluetoothよりもAKI.DACの方がおすすめです。
<Bluetooth部品>
Bluetoothレシーバー基板(型番なし)・・・amazon.co.jpで「Bluetooth レシーバー ボー」で検索して画面をめくってゆくとやがて複数の出品が見つかります。基板の画像で判断してください。しかし、基板の仕様がどんどん変更されてこの記事の内容が参考にならなくなりました。
2.4GHzアンテナ・・・UFLコネクタ・ケーブル付きと、アンテナとケーブルが別になったものとがあります。アンテナに関する詳しい解説はこちらです。いずれも秋月で購入できます。
DC-DCコンバータ・・・Bluetooth用の電源としてMCWI03-12S12またはMCWI03-12S15を使います。どちらも秋月で扱っています。
フェライトコア・・・秋月で扱っているLF-60B(\50)です。DC-DCコンバータを使う場合は必須です。参考画像のように2ターン巻いてください。何故かLCフィルタではダメでした。
<共通部品>
電源トランス・・・以前、特注して頒布していたプリアンプ用Rコア電源トランスを使いました。このRコア電源トランスは2020年3月8日をもって最後の受付を終わりました。代替できる電源トランスについては、上記電源部のところに解説があります。
真空管・・・12AX7/ECC83が2本と12AU7/ECC82を1本使います。銘柄の指定はありません。12AD7や5814などこれらの同等管にはヒーター定格が異なるものがあるので注意してください。
定電流回路のJFET・・・2SK30A-Oを使いました。Idssが0.7mA〜1.3mAくらいの範囲であれば、電流値に合わせてプレート負荷抵抗を160kΩ〜360kΩの範囲で調整すればOKです。この2SK30A-Oについては若干のストックがありますので、継続頒布に加える予定です。
トランジスタ・・・2SC3425は耐圧400V、hFE=45くらいの小型パワートランジスタです。継続頒布を行っていますが、同等の定格であれば種類は問いません。
インダクタとコンデンサ抵抗器・・・2.7mHは許容電流が10mA以上でDCRが25Ω以下のものが適します。10μは耐圧25V以上、4.7μFは耐圧50V以上の積層セラミック・コンデンサです。22μFは耐圧25V以上のOSコンです。8200pFと220pFは耐圧50V以上のフィルムコンデンサを使ってください。1.5μFは0.68μF〜1.8μFの範囲で250V以上の耐圧があれば十分です。
ケース・・・本体側はLEAD P102(W250×H50×D100)、カバー側はLEAD P402(W180×H50×D100)です。このサイズにBluetooth基板を収容するのは極めて困難で1ミリ単位の攻防になり、アンテナケーブルの始末でも苦労すると思います。AKI.DAC基板であれば類似の作例があるのでさほど苦労しなくても収まります。底板がついていますが、カバー側は底板をはずして取り付けます。焼付け塗装してあり加工仕上げもきれいです。板厚は1mmなので加工は容易です。
<注意事項>基板の改造にあたっては、どちらの基板も共通のこつと注意点があります。両基板ともにベタアースを含む多層基板であるため、熱伝導が非常に良いのでハンダごての熱をどんどん吸収拡散します。非常に細かい作業になるので細いこて先を使いたくなりますが、こて先が細いと熱の供給が追いつかずに基板の放熱に負けてしまい、こて先を当て続けてもハンダが溶けてくれません。こて先は太すぎず細すぎずの中くらいが作業性が良いです。熱と不純物で疲労したハンダはトラブルの原因となるのでこまめに除去する必要があるため、作業ではハンダ吸い取り線(または器具)は必須です。
<AKI.DAC基板の製作・改造>・・・(Version3と同じ)
キット付属のCR類と新たに用意したCR類と線材を基板に取り付けます。
<手順1>C3,4,5,6,11,14,16,17,R6,7,8,9を取り付けます。C11(1000μF〜1500μF)は大きいのでうまく収まるようにリード線を斜めに曲げてやります。<Bluetooth基板の改造>・・・(Version3と同じですがこの記事の内容はもはや参考にはならないでしょう)
<手順2>RCAジャックを取り付ける穴を流用して10kΩを取り付けます。ここからL/Rのアナログ出力とアースの線の引き出しも同時に行います。アース線はL/Rいずれか一方だけから引き出します。
<手順3>LEDの線(赤/白)をハンダでチョン付けして引き出します。非常に狭い場所なのでとにかくくっついて導通してくれたらよしとします。Bluetooth基板の改造も細かい作業と空中配線になります。基板上のハンダは少し吸い取ってから作業しないときたなくなったり、山が大きくなりすぎて隣との誤接触になります。OPアンプのピンの位置は間違えやすいので注意してください。
<手順1>出力抵抗2.2kΩを33Ωでバイパスさせます。注:左下の画像の470μF/16Vは省略します。
<手順2>負帰還抵抗47kΩと並列になる「1μF+4.7kΩ」を取り付けます。
<手順3>ライン入力RIN〜GND〜LIN間をショートさせます。
<手順4>外部アンテナのためのバイパスを配線します(詳しい解説はこちら)。
<手順5>外部LEDへの線を引き出します。
<アクティブ・フィルタの平ラグ・ユニットの製作>下図は、AKI.DACやBluetoothとアクティブフィルタの間に入れるLCフィルタです。実装上のポイントは両端にあるインダクタを離すことくらいで、それ以外の制約はありません。
左下はアクティブフィルタ本体部分で、右下が3分割された電源部分です。図が錯綜しないように真空管ソケット周りのヒーター配線は省略してあります。
下の画像は、2019年に私が途中まで作成して中断した状態の平ラグユニットです。左から「アクティブ・フィルタ・ユニット(R/L)」「高圧電源部ユニット」「ヒーター電源部ユニットとBluetooth用12V電源ユニット」です。ここまで作ったところで作業がストップしました。各ユニットはハンダを流し込んでいない端子があり、動作試験を行っていないので、配線ミスがあるかもしれません。
<Bluetooth用12V電源ユニットの製作>
DC-DCコンバータ MCWI03-12S12を使った、12V入力→12V出力の絶縁型・超小型電源ユニットを製作します。すでに述べたように、この電源ユニットが厄介なノイズを出してくれました。
<手順1>超小型のスルーホール・ユニバーサル基板にジャンパー線を這わせます。
<手順2>逆さにしたMCWI03-12S12(またはMCWI03-12S15)のピンにスルーホール・ユニバーサル基板を差込み、上から22μFのOSコンデンサを取り付けてハンダづけします。
<手順3>入力側は線出しをしておきますが、出力側にはBluetooth基板から出ている赤・黒の電源ラインをつなぎます。<レイアウトとケースの加工>
FM北海道(AIR-G')のYさんによる試作機はBluetooth搭載でケース加工図は下図のようになりました。Bluetooth基板の位置の選定と取り付け方法にはかなり苦労されたそうです。
Bluetooth基板、各平ラグに使用したスペーサーは下記のとおりです。
・Bluetooth基板:10mm(1か所は樹脂製)
・平ラグ:8mm or 10mm(試作版ではすべて10mmのメスーメスを使用)
・平ラグ(電源ユニット3のみ):15mm
・LCフィルター平ラグ:貼り付けボス<アンテナの実装>
アンテナについては解説を別に分けました。こちらを参照してください→ 「Bluetooth用2.4GHzアンテナの工作」
<ケースへの実装と全体の様子>
全体の実装の様子は下の2つの画像のとおりです。Bluetooth基板から出たアンテナケーブルは、電源トランスの脇を通って上側ケース内に現れて後面のアンテナに繋がっています。なお、以下の画像は試作機のものなので、回路図や図面と異なる部品がついており、真似をするお手本にはなりません。本機は簡単そうで案外手ごわいですから、図面と記事を隅々までよく読み込んでから製作に取り掛かってください。
下の画像はヒーター周辺の様子です。ヒーター配線は、往路と復路とを対にして接近させ、捻じるようにします。
ブルーで囲んだ部分は後から追加したフェライトコアです。Bluetooth基板の電源を供給しているDC-DCコンバータのスイッチングノイズがヒーター回路に侵入するのを阻止するために必要です。画像でもわかるとおり2ターンさせています(1ターンでは不十分でした)。入れる場所は、「ヒーター電源+ヒーター回路」と「DC-DCコンバータ」の間です。
物理スペックは、USB DAC+Bluetoothレシーバー Version3.0に準ずるもので期待以上の数字を出してくれました。残留雑音については若干劣るだろうと思っていましたが、想定内の結果となりました。歪み率特性は申し分ないものに仕上がっています。出力電圧(USB-DAC):1.72V(0dBFS)
出力電圧(Bluetooth):1.70V(0dBFS)
出力インピーダンス:XXXkΩ
周波数特性(USB-DAC):7Hz〜20kHz(+0.3dB、−1dB)
周波数特性(Bluetooth):12Hz〜20kHz(+0.3dB、−1dB)
残留雑音(USB-DAC):130μV(帯域80kHz、歪率データより推定)
残留雑音(Bluetooth):250μV(帯域80kHz、歪率データより推定)
難病発症のために一度は諦めた本機でしたが、お陰様でとても良いものに仕上がりました。物理特性は十分に良好ですが、そのような数字に気を囚われることなく音を聴いてみてください。私が求めていた音がここにもあります。